何を置いても最初に私が抱いた感想は、「この人と飲みに行きたい」というレビューとしてはなんだかよくわからないものである。
舞台は大船。京浜東北線の終着駅にして東海道線や横須賀線も走っている。大船が生活圏内の私としては、舞台になっているだけで筆舌に尽くしがたい(と言ってもレビューしているのだが)親近感を覚える。言い回しも独特で登場人物それぞれの持つ個人史がきちんと性格に反映されている点なども読んでいてほぉ〜〜となるのだが、この作品の最も特筆すべき点は著者の知識量とそれをまとめる論理的思考である。
海外の事を書く場合、必ずと言って良いほど著者に渡航の経験があるものだが、海外にいたときに考えていたことというのは実際に住んだりしなければ大抵の場合茫洋とした思索の海底に沈んでいってしまうものだろう。
これを岩橋氏は論理的思考によりまとめるだけでなく、言語という記号として落とし込み第三者へわかりやすく伝えることに成功しているのだ。
尻切れトンボで申し訳ないが、レビューはここまでとさせていただきたい。少なくとも言えることは、神奈川県民でなくても容易に情景を脳内に描くことができるだろうということ。もっとリアルな想像をしたい方は、京浜東北線で最後まで寝ているかグーグルアースで訪ねてみればよかろう。階段下のエレベータ横でインドネシア人に会えるかもしれない。