第12話・沈黙
パルとタケルは、ようやく走るスピードをゆるめることができました。なぜなら、突如として、ふたりの後ろに迫りくるロボット兵たちがコロコロと転びはじめたからです。先ほどの広場で見たどたばたと同じ光景です。
「エネルギー源が大砲におさまって、また足止めをされたんだわ!」
パルは確信し、タケルに呼びかけて走るのをやめました。
ロボット兵たちは後方で次々とつんのめり、倒れ、転がり、重なり、お互いの重さで身動きがとれなくなって、見る見るうちに鉄の小山を築いていきます。
「わっ、バカ。早く起きあがれ」
「どけ!」
「オレの上に乗るんじゃない」
「助けてくれー」
ロボットたちはかぶさりあい、ひしめきあって、うずたかく積み上がりました。その様はまるで、編みカゴに山盛りにされた銀色に光るイワシのように、タケルには見えました。
さらにパル博士には、次に起きることがわかっていました。
実際、その直後に、予測していたことが起きました。ロボット兵たちが次々に、ぱったりと動かなくなっていったのです。遠く後方の広場にある地上の太陽から、ロボットたちはエネルギーを得ています。しかしその大切なコードが、人々の手によって引き抜かれたのです。エネルギーの供給源を失ったロボット兵は、なすすべもなく、ランプの火が吹き消されたかのように押し黙り、動きを止めました。多くの機械仕掛けの生命が、見る見るうちにくず鉄のかたまりへと変わっていきます。それはひとの死とは意味が少しちがうものの、ひどく気味の悪い光景でした。ロボット兵たちのむくろは、おびただしい昆虫の抜けがらを想像させました。
あっという間でした。さっきまでつづいていた押しくらまんじゅうのような大騒ぎがうそのように、ロボットたちのうごめく小山は、完全に沈黙しました。今やそれは、鉄で築かれたアリ塚のように微動だにしません。
タケルは、ようやく安心して息をつきました。
「勝ったんだね、ぼくたち・・・」
「そうよ・・・」
パルはへとへとになりながらも、満面の笑顔でこたえました。そして感極まって、涙を落としてしまいました。
それを見たタケルは、はっとしました。そして、この駆けっこで勝ったことの本当の意味を、そう、その大きな大きな意味を、じんと噛みしめました。
あの広場に響き渡る、人間たちの歓喜の声が聞こえるようでした。
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