第11話・エネルギー源

 人間たちが待つ広場に、ついにエネルギー源がその姿を現しました。おおっ、というどよめきが起きました。

 エネルギー源はたくさんのコードに導かれ、じりじりと土をかみながら進みつづけました。痛々しくも、しかし神々しい輝きを放つそれを見て、人々は声を失いました。誰もが目を見開き、尊敬と畏怖の念でもって、それを迎えました。やがて徐々に、目の前で展開されている光景の意味を知り、誰もの胸に熱いものがこみ上げてきました。そしてついに、大輪の花がポンと開いたような歓喜の雄たけびがわき起こりました。

 うおー。

 わー。

 うおー・・・

「ついに我々はエネルギー源を手に入れた!」

 ちょびヒゲの隊長が大声で叫びました。人々は口々に喜びの声を上げ、神に感謝の言葉をささげながら、駆け寄ってエネルギー源を取り巻きました。そして見上げました。

 それは、まっぷたつに切られた太陽の片割れでした。空に浮かぶ、半球の太陽の、その失われたもう一方の半分です。それは長い間、地上に落ちたまま、ロボットたちにかくまわれてきたのでした。それがようやく、日の目を見ることになったのです。つらい長旅に耐え、土にまみれながらも、ここまでやってきてくれました。半分にされた地上の太陽の放つ尊い光、激しい熱、そしてなによりもおごそかな美しさは、人々の心に深い感動を与えました。

 わめき散らすロボット王が、引きずられるままにこの場についてきていましたが、人々はそちらを見向きもしませんでした。

 半分にされてから一千年もの間、宮殿の牢獄に閉じこめられていた地上の太陽は、曇り空のすき間からのぞく相方に照らされ、元気づけられているように見えました。それはなおも大勢のロボット兵たちに引っぱられ、少しずつ動いていました。ゆっくりと、大砲の砲身をつらぬくコードの導きに従い、砲の入り口に近付いていきます。やがて地上の太陽は、筒口にすっぽりとくわえこまれました。大砲の直径は、太陽の大きさに合わせてつくってあるのです。パル博士の見事な計算です。

 さらに進んで砲身にその身をおさめると、長いトンネルを通って、砲底にぴったりと半球のお尻を落ち着けました。

「よし、準備完了だ。エネルギー源に・・・いや、地上の太陽に刺さったロボットどものコードを引っこ抜け」

 号令がかかり、人々はいっせいに作業に取りかかりました。大砲の底の小さな出口からはるか山向うにつながったたくさんのコードを、牡鹿のツノほどもあるペンチで引き抜くのです。

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