第一章 其山怜香 (二十六)
家に帰る電車の中で怜香は、バッグから小さな香水ペンダントを取り出すと理恵の言葉を思い出していた。
・・怜香さん、怜香さんの「怜」には二つの心が住んでいるの、言い換えれば二つの人生があるということね・・
・・一つは、「忄」の心の人生。怜香さんは、今、この忄(りっしんべん)の心で生きている。この心で生きるのは少し危険ね・・
・・もう一つは、「心」そのものの人生。この、心そのものの人生で生きることが出来れば、怜香さんの人生に素晴らしい輝きを与えてくれるわ。その輝きは、怜香さんを幸せに導いてくれるのよ・・と理恵は言った。
「心で生きる・・」
怜香は小さく呟いた。
怜香が手にした香水ペンダントには理恵が怜香の為に、怜香の為だけにブレンドしてくれたアロマオイルが入っている。
ブレンドオイルは、
☆フランキンセンス・・意識の奥深くに届いて人を見下す傲慢さを消してくれる。
☆オレンジ・・心身をリラックスさせる香りが人を思いやる余裕を与えてくれる。
☆パチュリ・・母なる大地の香りが優しい気持ちにさせてくれるの3種類だ。
そして、このブレンドアロマのネーミングは〝クレール・レイカ〟=澄みきった怜香・・。
『心ある怜香』だ。
理恵に二つの心を持っていると言われたとき怜香は、なぜか妙に納得していた。
その前に上ばかり見ていると言われた時は、正直当たっているとも思ったし・・、それと同時に反発の心が怜香の中で少し頭をもたげたのも事実だ。
だが、足元の四季の移ろいや、小さな虫や動物たちの声が聞こえていない・・と理恵に言われたとき。
その例えがこれもまた妙に腑に落ちて納得も出来たから、怜香のなかに少し頭をもたげた反発の心は、スーと静かに波が引くようにどこかにいってしまっていた。
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…名前の一字目に 『ほ』 の文字がある人…
☆人に潤いをもたらす、かわいい人☆
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