シュウケツ
第18話 イシキのシュウケツ
………………。
…………は?
……ここは、?
《ここは、どこ?》
!!!!!
その五文字が浮かび上がると、雪の意識は覚醒した。だが、つい先程まで縛られてたハズの痛みが無い。
いや、以前に【身体の感覚】さえも無い。手を握ろうとしても、何をどうすれば手を動かせるのか分からない。頭を動かして辺りを見渡したいにも、どうすればいいか分からない。ただ、意識がある。それしか分かる事がなかった__。
暫くして、声が聞こえた。(耳を澄ますという事は出来ないので)、そこに意識を集中させた。
「……は?」
「は。既に処分済みです。データはプログラムに取り込みました」
何かに関して話しているようだった。
「では姫新雪の方は?」
《!?》 雪は自分の名前を呼ばれた事に驚いた。何故……。
「同様に処分済みです。以外省略させて頂きます」
「わかった」
《私が……処分された? 私はここにいるのに? そういえば藤森君がいない。彼は処分されてしまっ……。いや、私はまだ処分されていない。はず。なら、藤森君も? どういうこと!?》
雪の意識は、混乱し、思考した。ここはどこなのか、何をされたのか、自分はどうなってしまったのか。思考し。思案し。思慮し。果てに、一つの答えを導いた。
途端、雪の意識は集結し、【バグプログラム】として再形成された。
《私は、データに、なったんだ》
***
雪は、アドハー社【超常人種計画】のデータとして取り込まれた。が、エラーかはたまた目の異常の効力か、バグとしてプログラム内に自我が芽生えた。
《不思議……。アドハー社のデータとか、システムが勝手に理解出来ちゃう》
意識が集結してからの雪には、それまでとは異なる世界が待っていた。0と1の羅列。無数の回路。
データもあり、社員状況。永久機関供給の歯車を回す子供の人数。手にとるように分かる。
中でも目を引いたのが、【身体の異常とそれに伴う能力覚醒。種類と極限】という項目。それには、〈異常〉の種類と詳細。また、その内の幾つかには〈極限〉というものもあった。
例えば、冨永小福____彼女の異常は〈第五感〉。そして能力の極限は〈第五感の操作〉。
《そっか……》
読み進めると、雪の家で起こっていた、二人の性行為も記載されていた。恐らく(少し前から気付いていたが)学校生活だけでなく、私生活まで監視されていたのだ。
《やっぱり、私達がいるから。いや、私達が作られた時から……。データは搾取され続けてたんだ。なら、私達が生きてる限りただの……》
雪は。迷っていた。
無論、データの海を迷っているわけではない。広大なデータを掌握している雪にとって、迷うという事象は起こり得ない。
雪は、アドハー社をどうするか迷っている。子供に無残に欲望を押し付けた彼らは許し難い。だが。この街を救ったのも、紛れもない彼らである。本当に壊していいのか。私達だけ居なくなれば済む話なのか……。
その刹那。雪は、ある情報を認識した。
同時に雪は、森の奥の家で見つけた、男の手記を思い出した____。
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