第16話 シンリャクするイジョウ
2人は、男の手記を読み終え、屋上に向かっていた。2人の目つきは残渣された流水の如く。雪に関しては、以前の輝きを戻していた。
あの2人の一件___性事情は何かの間違いだと割り切ったように。そして新たな目標を秘め。
屋上に繋がるドアを思い切り開ける。そこには、まるでヘリコプターのような乗り物があった。
「これ、みたいっすね!」
「そうみたいだね」
先程の書斎で見つけた、設計図。それには【空中移動用薇式飛行器】と書かれ、屋上に設置とも書いてあった。
2人は急を要した。それはアドハー社に確かめなければならない事が山程あるからだ。それは……。
「ここに薇充電挿せばいいのかな?」
「多分そうっすね。あ、でも俺の充電あんまり残ってないんで、雪さんのでいいっすか?」
「うん。わかった」
カチッ。という音が、廃れた家屋の屋上で響く。周りには木が生い茂っているものの、真上には飛び立てる隙間が存在していた。芝生の効果だろうか。
「このレバーでいいのかな?」
「いや、それはホバリング用で、隣の隣が浮上っすね」
設計図を頼りに操作していく。一通りの動作を頭の中で覚えた雪は、勢いよくレバーを引いた。
と、共に6個に及ぶプロペラが突如回転し始めた。
「うわぁ、本当に浮いた!」
「すっ、すっげぇ……」
「よ、よし。向かおう。アドハー社へ!」
「そうっすね!」
2人は空中に飛び出した。
それは鳥___とまではいかないが。あやふやにも、しかし確実に目的地に向かっていた。
***
「ちょ、藤森君!これ全然充電されてないよぉ!」
「だから言ったじゃないっすか!?」
「もー!何に使ったの!?」
数分前、アドハー社まで数百メートルの地点上空で、雪の薇充電は残りわずかの値を示した。この機体は相当な出力を要するらしい。そのために、少し無茶だが藤森との薇充電の交換を試みた。意外にもそれは成功し、安定した飛行を取り戻した。が、それは束の間であった。
藤森の薇充電は、朝、ゲームをしていたせいで、充電も残っていなかったのだ。
「こ、高度を取り敢えずさげましょうよ!こっから落ちたらキツイっすよ!」
「じ、じゃあ、あの木に落ちよう!」
雪はホワイトドーム入口付近の木を指した。同時にプスん。と滑稽な音と共にソレは墜落を始めた。
「うわああぉああああおいおいあだかりむりこれわいああああ」
ホバリングレバーを引いたところですでに反応はなく、2人はスピードを落とさないまま自由落下が加わり落ちていった。幸運なことに機体のフレームに守られ怪我は最小限だったが、2人は意識を失ってしまった。
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