第4話-①
キーンコーンカーンコーン
昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。
僕はしばらく憑島の机のそばに立ち尽くしていると、憑島は僕の机におもむろに腰掛けた。
「はい、それじゃあ授業を始めます。
前回の宿題はやってきて、ますよね?
それでは憑島さん、1番の答えは?」
「x=251/9πr です。」
おかしい。憑島は他人には見えないはずなんじゃないのか?
「はい、正解です。はい、それでは…この問題は、積分でも解けるのですが、実はベクトルを用いて、めちゃめちゃ簡単に解くことができます。…」
まるで僕だけがいないかの様に世界が進んでいる。いや、僕と憑島が入れ代わった、とでも言った方が正しいな。
自分の行動によって何も変わらない、誰も害されない、という気楽さがある意味心地いい一方で、誰も自分のことがわからない、知らない、言わば自分の存在の価値がないというのは、こんなにも虚しくて物寂しいものなのか。
今まで、憑島が味わってきたのはこんな感覚だったわけだ。
僕は憑島の言葉の意味が少しずつわかってきたような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます