第3話-③

よし、心の踏ん切りがついた。例の女の子の元に歩いていく。もちろん教室には誰もいない。


「あのー、やっぱり話してみたいなぁ~、なんて…。思いまして。ハハハハ……。」


「だから何度も言っている通り、私とは関わらない方がいい。悪いことは言わないから。」


よし、僕はやるぞ。できる、できるさ。僕ならできる。


「じ、実は、初めてあなたを見た、その日から、ずっと、あの…その…」


だめだ。

言わなくちゃ、言わなくちゃ始まらない…!


「す、す、好きでした。よかったら付き合ってもらえませんかっ?」


さぁ、どう来るんだ?


「……。そうか、そうだったか。

ありがとう、その気持ち、嬉しいよ。

わかった。私の名前は憑島妖乃(ツキシマアヤノ)。こちらこそ、よろしく。」


え…。うまく…いったんだよな?


「じゃあ私と、代わってくれる?」


? どういう事だ?

ズィズィッ!

考える間も無く憑島は僕の前に近づいてきた。


「…キスだ。キス……してくれ。」


まさか、こんな急展開になるとは思いもよらなかった。

僕の目をジッと見つめている。憑島の瞳は、どこまでも透き通っていて、吸い込まれてしまいそうな美しさだった。


「う…、わかった。」


憑島はニコッとした後、唇を少し突き出して、目を閉じた。

僕も同じ様に目を閉じつつ、口をそちらに寄せた。

互いの唇が、軽く、優しく触れた。柔らかいけれと、そことなくヒンヤリとした、そんなキスだった。

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