第2話 警備
私は警備員として働いている。
やりがいのある仕事ではあるのだが、退屈も感じる。
いいことも悪いこともすべて経験するタイミングは決まって一人のときだ。
11階建てのビルの警備なのだが、このビルが何をしているものなのかはあまりよく知らない。隠匿されているようで、知ろうとしなければわからないのだ。
住んでいる人もまばらにいるが、おおむねなにか事業をやっているようである。
おそらく、あまりよいことには使われていないのだろう。雇い主も顔を見る連中もあまり人相がいいとはいえない。
給料の払いがいいのでそれはしょうがないのかも知れない。
最近、そこの7階に住んでいる20代後半の暗そうな青年から相談を受けた。
エレベーターの監視カメラを見ていてほしいというのだ。
確かにこのビルのエレベーターには監視カメラがあり、警備室からは確認することがが出来る。
理由を尋ねると青年は「余計なことは言わず、見たことだけを伝えてくれ」という。
そのまま部屋に戻るから見といてくれと伝えるとそそくさと青年は出て行ってしまった。
警備室は一階なのでそのまま青年が乗るエレベーターのカメラを見ていることにした。
見ていると青年がエレベーターに乗ってきた。黒い服の別の男も一緒だ。
おそらく7階を押したのだろう、エレベーターが動き出す。
途中4階でとまり、黒服の男が降りていった。
何の変哲もない映像だ。
7階に着くと青年は一度降りて、そしてすぐ乗りなおした。降りてここにくるのだろうか?
エレベーターが動き出し4階で止まった。
先ほどと同じ黒服の男が乗ってきた。
そのままエレベーターは1階に到着し、二人が降りる。
エレベーターを降りて警備室までは少し距離があるのだが青年はすぐにやってきた。
走ったのだろうか、少し息が荒い。
「どうだった?」
青年が何を期待しているのか、なんと応えればいいのか私にはわからなかった。
「特に何もなかったように、思いましたが・・・。」
私は率直に思ったことを伝えた。
「・・・そうですか。」
「はい。残念ながら。」
「なら、いいです。」
「お力になれずに申し訳ありません。」
きっとなにか気になることがあったのだろうが、私は気づけなかった。
二日後、
その青年は、
亡くなった。
警察の方から彼の携帯に私にエレベーターのことで相談したと記載があったらしく詳細を確認された。
そこにはその内容が記載されていた。
【最近誰も乗ってこないのに4階でエレベーターが止まる。
監視カメラで見ても異常はないらしい。】
想像力に勝る恐怖などないのかもしれない 天司 時人 @tentokye-
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