ノウハウ編 第4話 セックス1万時間

個人の性の歴史とは、男女の信頼関係を元に登っていく成長の階段のようなものだが、その階段とはどこまで伸びているのだろうか。


もちろん、その階段が「終わる」のは本人が死ぬ時だが、その階段の「高み」はどこまであるのだろうか。



自分は心から女の子とセックスが好きだったので、ただひたすら性の階段を登り続けてきたが、それを続ける中である時、「セックスを体得マスターした」気がした。


山を登っている時は目の前の山肌しか見えないが、ある頂きまで登ると周囲の景色が見えて世界が一変するように、それまでは目の前の女性に満足してもらうことに必死でテクニックを磨くことに必死だった自分が、あるレベルに達した時に「セックスの全体像」が俯瞰で見えた気がしたのだ。



山の頂きで見る風景は人の世界観を変えるが、その時に得たのは、技術ではなく「直観」としてのセックスだった。


相手の女性の体温や各神経の興奮度、粘膜の充血度などをリアルタイムデータとして察知し、身体をひとつの構造体として把握して3Dでスキャニングするように正確に把握することができるようになったのだ。


つまり、頭で何も考えなくても相手の女性が求めることが理解でき、それをそのまま体現することができるようになったので、単なる「行為」や「対象」としてのセックスではなく、「相手の女性と一体化する営み」としてのセックスを行えるようになったのだ。


実際にその直観を元に女性とセックスすると、初めて寝た女性が人生で初めてイクようになり、一晩で何度もイクようになり、複数の女性が「秘密の部屋」に入れてくれるようになった(第8話参照)。



初めて女の子の秘密の部屋に入れてもらった時はその存在を知らなかったので、入れてもらった時にとても驚いた。


世の中に出ているセックスハウツー本はほとんど目を通したが、その存在について記しているものは見たことがなかったからだ。


今考えてみれば、世の中に流通しているセックスハウツー本で本当にセックスが上手い人が書いている本はほとんどない。


そういった本は女性の医者やAV男優が書いていたりするが、医者が知っているのは「セックスにまつわる保健医療」であり、AV男優が知っているのは「AVのセックス」である。


本当に性に向き合いたい男女が求める「日々の癒やしや成長の糧となるセックス」とは異なるものだ。


ネット上に数多あまたあるセックス動画でも、秘密の部屋でイッている動画というのはほとんど見たことがない。



初めて女の子の「秘密の部屋」に入れてもらった時はその子の特異体質かと思ったが、その後の経験で多くの女性がその部屋を持っているということを知った。


秘密の部屋は手前から数えて4番目の部屋だ。一番手前がGスポットの部屋、次がGスポットとポルチオの間の部屋、次がポルチオの部屋、そしてさらにその奥にあるのが秘密の部屋だ。


基本的に奥の部屋に行くほど女の子の快感は増す。オーガズムも部屋が奥になればなるほど桁が変わる。


秘密の部屋でイッた女性は、激しく痙攣けいれんした後にしばらく気絶したような状態になる。その様子はまるで40億年の生命の神秘を凝縮しているかのようだ。



秘密の部屋はかなり奥にあるため、それなりにモノが長くないと届かないが、物理的に長いだけでは秘密の部屋には入れさせてもらえない。


秘密の部屋は普段は固く閉ざされていて、本能の部分と理性の部分で許可してもらわないと入れさせてもらうことはできないのだ。


入室の許可をもらうためには、女の子の身体と心の「受け入れる気持ち」が最大になる必要がある。


つまり、相手の男の子供を持ってもいい、という判断だ。



相手のことを考えながら敬意と誠意を持って付き合い、良いデートとセックスを重ねていった男だけが、その判断をもらえる。


当然のことながら、単にテクニックが上手かったり、モノが大きいだけでは女の子は満足しない。


相手への信頼や自分が理解されている感覚があって始めて、心から相手の子供を持っていいと思うようになるのだ(もちろん、それ以外にも好みや相性なども大きな条件になる)。


身体を許してくれた女の子がさらに秘密の部屋に入れてもらえるくれるようになると、「セックスが上手いセックスマスター」と言っていいのではないかと思う。



最初に書いた問いは、そこに行けるようになるまでにどれくらいの修行積み重ねが必要なのだろうか、ということだ。


アメリカの著述家マルコム・グラッドウェルが書いた本に『天才! 成功する人々の法則』というのがある。その本には、どんな分野でも一流になるにはおよそ1万時間の試行錯誤が必要だと書かれている。


確かにこれは自分の職業経験でも実感できることだ。


プログラマーでもプロジェクトマネージャーでも営業でもデザイナーでも、若い頃にがむしゃらに働いて一定の経験を積んでいない人は、いくらセンスが良くてもやはり一流のレベルまでは行くことができない。


朝から晩まで働いて正味12時間、それが月20日だとすると、年間で2880時間を費やすことになる。そのペースで最低4-5年はかかるのだ。


確かに、「専門職として5年のハードワークでようやく一人前」という感覚は職業的に正しい。


(実際には現場を知らない経営幹部や総務人事などが考えたくだらない職業ローテーションや社内向けの仕事が入ったりするので、5年経っても全く専門性が身についていない人は多いが。)



以前、「セックスが上手くなるには一人の女の子と長く付き合うのが一番だ」と書いたが(第4話参照)、それは第一に習熟に時間を多く費やすことができるからだ。


いわゆるナンパ師の男に対して、よく女の子は「経験人数だけが多い男はセックスがお粗末だ」と蔑むが、ナンパ師は自分の欲望しか頭になく目の前の女の子のことを考えていないということ以外に、この時間の要素も大きい。


細切れにたくさんの女の子を抱いたところで、経験の積み重ねにはならないのだ。



3年付き合った看護師と同棲していた頃は、ほぼ毎日2-3時間はセックスしていたので(週末は半日ぐらいやっていた)、生理の間を除くと少なく見積もっても月に70時間ぐらいはしていたことになる。


3年で2730時間、これに鬼軍曹との「特訓セックス合宿」なども含めると、看護師の彼女と別れた頃には、およそ初級から中級ぐらいにはなっていたのではないだろうか。


そして、「セックスを体得マスターした」と感じた頃には1万時間を超えていたのではないかと思う。それは確か、最初の結婚生活を経て13股をやっていた頃だったと記憶している(第10話参照)。



生涯に渡って性が充実している男女は、時間が自由になる学生時代に付き合っていた相手と「猿」になっていた人が多い。


これは時間を積み重ねるのに都合がいいからだろう。


日本人の性がお粗末なのは、その世界観が貧困なことが根本的な原因としてあるが、さらに営みとしての積み重ねの少なさという問題も大きい。


性が与えてくれる豊かな癒やしや気づきを触れるには、まずそのために良いパートナーを得て「一緒に時間を費やす」という考え方を持つことが重要なのだろう。


信頼関係のある相手と性に耽るのは人生においてとても良いことである。

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