第3話 空要塞計画


 「昇進おめでとう、東郷空軍元帥大将」


 「イヤイヤ、此れも、閣下に引き立て頂いたからで、御座います」


 「取り敢えず、座ろうか」


 「あ、はい」

 

 私の前には、空軍大臣の山本権兵衛やまもとごんのひょうえがいる。

 黒い髪が、テカテカと光り英国風のスーツを着、キッとした顔は【空艦少女大戦】でも女子に大人気であった。

 彼との好感度が上がると、【カレーライス】や【肉じゃが】が、手作りされるイベントが発生したりする。


 「で、生き残った場合に、新しい艦の設計図を考えると言っていたが、出来たのか?」


 「はい閣下、此れが新しい艦の設計図です」


 「ほぅ、凄いな……」

 

 パラパラと描かれた設計図を見、暫く考え、私を見る。


 「此れは、大体は巡洋艦だが、戦艦は無いのかね?」


 「空軍大臣には、申し訳無いと思いますが、戦艦の時代は終わったかと」


 「ほぅ、次は何の時代かね?」


 「巡洋艦と航空機の時代です」


 「では、八八艦隊計画は白紙に戻すと?大和計画は?」


 「はい、全て白紙に戻し、此等の艦を作らせます」


 「造船業界の連中は、文句を言わないか?」


 「何も、計画中止にする訳では、無いのです。寧ろ、横須賀・舞鶴・呉・佐世保で大量生産出来ます」


 「お主の事だから、それだけでは無いだろう?」


 「ええ、八八計画で六億円、大和計画で五億四千万円を使う替わりに、一艦三千万円の巡洋艦を多数配備、空艦少女を増やします」


 この時代を平成の時代と比較すると、一円が二千円。

 一隻に二千億掛け、更に運用するコストが、高額な艦は要らない。

 

 そして、空艦少女は艦か少女達、どちらかが、死んだら片方も死ぬ。

 だから、少女達も大切にされ、出撃も満足も出来ず、腐るか慢心する。

 だが、安すぎると命のバーゲンセールで、人材の損失が起こる。

 普通に、扱って貰える程度の金額が、大体のこの値段だろうと思い提案した。


 何より、このヤマト国は、ルーシアと戦争をしたばかりで、お金が無い。

 そこで、一度に、大きな物を作るのでは無く、小さい艦を少しずつ増やす。


 「そして、何が目的じゃ」


 「空艦少女を、ヤマト国の全土に配備、空の要塞とします。更に、乙女通信網メイデンネットワークを使い空通信網スカイネットワークを形成予定」


 「ほぅ、浮沈空母ならぬ、空の要塞か!空通信網スカイネットワークは何故?」


 「時代は、如何に早く情報インテリジェンスを得るかが、鍵です。ルーシア艦隊との戦闘は、エングランド王国からの情報で、勝てました」


 無線は、傍受され易い。しかも、ヤマト国の暗号技術は未熟で、解読されやすい。

 だが、乙女通信網メイデンネットワークは、各自の念波で通信される。

 更に、特定外の乙女が聞いても、内容が意味不明に聞こえる。

 

 例えば、【此れより、我、真珠湾を攻撃する!】。

 此れを、特定外の乙女が聞くと【安いよ、カツオがべらぼうに安いよ!】という内容に聞こえる。


 そして、念波の距離は練度レベルが低い場合は一人あたり、半径千キロメートル。

 つまり、少なくともサンディエゴからヤマト国は、凡そ九千キロメートル。

 リアルタイムで連絡をするには、太平洋上に、空艦少女を九艦置く必要が有る。

 ただ、私の場合は、艦レベルが九十九だから、世界の何処でも連絡を入れられる。


 【空艦少女大戦】の時は、最前線で、チームの仲間に情報を送り続けていた。

 前線に常に居る事から【不動の東郷】とか、【東郷とうごう本部(最強)】と言われていた。

 イヤね、レベルが弱いのに、無茶して、私に向かって来て、法撃したら沈む方が悪いんだよ。


 「所で、航空機は何処に置く?」


 「アッ……」

 

 何処に付けるんだっけ……考えろ。

 そうだ、前に会社のコンサルの男が言ってた。


 『下部第三艦橋は男の浪曼……僕なら、艦底前部に逆さまに甲板を作り、カタパルト射出し、回収は艦底後部からで、トコロテン方式でやる』


 そんな感じだったな……取り敢えず、提案だけしとこう。


 「大体のイメージです、此れをこうします」


 「ほぅ、ほぅ、逆さまの状態から出すのか?」


 「ハイ、普通なら、失神ですが、無人機にします」


 「此れらを一人でやるのは、大変では?」


 「勿論、一人では無いです。三十名程のクラスを作り、三交代制でやります」


 「成程、艦と契約する生徒を増やし、仕事を分担する」


 「ええ、そうです。私の様に、【艦に選ばれた少女】とは違い、一艦で複数の少女が、契約するのは可能ですから」


 「其れは、良い考えですね」


 「何より、一人ぼっちは寂しいですから……」


 「確かに、何時も、貴女は一人艦隊ですからね」

 

***


 【艦に選ばれた少女】

  

 ある意味で幸せでも有るし、不幸でもある。


 幸福な点は、寿命・病気・怪我という物が無く、空腹等も感じる事は無い。

 また、夜目が効き夜戦も可能。

 更に、雲が無いところも進め、艦を呼び出す事が出来る。


 不幸な点は、艦は一人で運転し、部下を持てない。

 艦に載せられるのは、艦が認めた、二人までの人物。

 何より、永久に他艦に変えたり●●●●●●●乗る事●●●が出来ない。

 つまり、艦が沈むと同時に死亡ゲームオーバーする。


***

  

 これが、東郷八子の設定の一つ。

 その為、【空艦少女大戦】では、扱う人は居なかった。

 私は、自分と名前が同じ感じだったから選んだ。

 ほんと、何回キャラ変更を考えたか……

 私が課金、運営が【黄金の十分アドミラル・テン】と【嵐を呼ぶ女ストーム・ガール】の能力を実装したから頑張れた。


 「分かった、軍神の意見を素直に聞こう。替りに、君に行って貰いたい国がある」


 「はぁ?」


 「サライェボだ!」 


 「民族紛争の火薬庫ですね、火遊びしてこいと?」


 「イヤイヤ、オースガリー帝国の夫妻の結婚式が、行われる」


 「バルカンの火薬庫で、火薬庫に入刀ですか?」


 「キツイ事を言うのう……民族団結の為に、危険を犯すと言って欲しい」


 「本来なら、私の様な者が行くよりは、輝夜様の親族が、行かれたら良いのでは?」


 「輝夜様が、世界を巻き込む戦の気配が有る。止められないが、東郷なら大丈夫だろうと言われた」


 現在は、空歴1905年、サライェボ事件は九年後の1914年に起きるはず。

 異世界ならではの変化か……

 此れが切っ掛けで、第一次世界大戦が起こる。

 日本は、特需で儲かる予定。

 コンサルなら、此処で更なる利益を確定したい所だな……


 例えば、ヤマト・ルーシア戦争の国債。

 六十年掛かるという借金を返す、何かを起こせないかな……

 あ、そうだ!良いこと思いついた!


 「閣下、お願いが有ります」


 「何だい?」


 「行く時に、アメリゴ国に寄らせて貰っても宜しいでしょうか?」


 「フフ、戦争の国債を早めに返済、出来る方法です」


 「そんな気がしていたよ!入り給え」

 

 手を叩くとガチャっと扉が空かれ黒髪に黒い瞳、長身で色白、大きな目。

 ヨーロッパ人と思える様な、眉目秀麗の男が入って来た。


 【空艦少女大戦】では、旦那にしたいキャラ一位。

 好感度が上がると、ポケットから炒り豆を貰えるキャラ。

 限定イベント【節分大戦】で勝利すると、えんどう豆と空豆が三斗程、運営から貰える。


 それを使い、バレンタインデーに告白するルートが創られた。

 貰えなかった女子が、写真の前で豆を備えて、ネット配信してたのは、良い思い出。

 

 「秋山真之あきやまさねゆき少佐です。お見知り下さい」


 「彼は、知っての通り、日本界界戦の影の立役者だ!ガチロック艦隊の侵攻ルートを考えた人物だ!」


 「東郷空軍元帥です、お陰で様で、ガチロック艦隊を一網打尽に、出来ました」


 「軍神様にお褒め戴けるとは、幸いです」


 「どうじゃろ?彼を君の部下とし、三笠に載せられないかね?彼は、エングランド持込の流暢な英語、ヨーロッパ人に間違われる位の容姿だ」


 「私は、良いです。ですが、三笠に本人が行かないと、分かりません」


 「そうじゃな、その前に、お主の策をきかせて貰おう」


 「分かりました」


 私は、黒板の前に立つと説明を始めた。

 

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