第2話 凱旋と受勲



 

 門松模様のヤマト国旗を、多数の人々が振っている。

 私は、馬車に乗りながら、手を振り返す。

 この世界は、【空艦少女大戦】とは差異は少し有るが、殆んど同じ仕様だ。


 例えば、この世界は海が無く、替りに雲界がある。

 そして、雲の上を飛べるのは、純潔乙女メイデンキーとし、乗せた船だけ。

 それ以外の船が、雲の上を走ると、どんなに強固に作っても、空中分解する。

 更に、そのキーの力を持てるのは、殆んど十代の少女だけ。

 たまに例外で、船に愛された少女もいる。


 【空艦少女大戦】の世界では、船の機関は、主に三つの動力が有る。


 一つ目【燃焼エンジン】

  *乙女をキーとすれば、誰でも船に乗れる。

   キーの少女は、魔法の力を与えられる。

   石炭・石油といった化石燃料を使う機関。

   燃料が無くなれば、止まる。


 二つ目【魔導マギエンジン】

  *乙女をキーとし、魔法を使える者が乗り、魔導機械を使う機関。

   キーの少女は、魔法の力を使えられる。

   大気中の魔力を無限に使えるが、壊れやすい。


 三つ目【乙女メイデンエンジン】

  *乙女達が艦と契約し、無限の力で、艦を扱える機関。

   鋼鉄の乙女石アイアン・メイデンダイトという特殊鉱石からコアを作る。

   コアとの契約者以外は操作出来ず、コア数で艦数が左右される。

   契約出来るのは、美少女が多い。

   同時に、固有魔法オンリーワンや魔法の力を与えられる。


 三つとも、艦に愛された少女以外は、二十歳で上がりを迎える。


 我が国は、三つ目【乙女メイデンエンジン】を使っている。


 此れは、平賀源内という、大天才の男が作り出したエンジン。

 源内は、少女が大好きな露理婚ろりこんだった。

 当時は、男尊女卑の時代。

 源内は、少女達を世界に羽ばたかせる事を考え、遂に新機関を作った。


 初期は、【千里せんりちかし】から【炉里近ろりこん機関】と名づけた。

 やがて、南蛮からの知識を得た源内は、【乙女メイデンエンジン】と名前を変えた。

 源内は、エンジンを開発した後は、船を作り、貿易と新製品で、大金を得た。

 その大金で、全国に乙女メイデンエンジンの適合者の学校を増設した。


 大金を得た源内は、多くの神社仏閣から喜捨を申し込まれたが断った。

 ある仏僧が、『来世は、畜生に生まれる』と脅した。

 源内は『私は、猫に変わりたい。少女達から可愛がられたい』と言い返した。

 現在では、少女達の間では、猫を【源内さん】と可愛がっている。


 そして、時代は変わり、高杉晋作という人物が現れた。

 その男は、少女が艦を操作する部隊【奇兵隊】を作った。

 それまでの戦は、乙女メイデンエンジンを扱う少女と戦う男達が、船に乗っていた。

 だが、少女に艦の操作を教える事で、少女一人で、船の運用を可能にした。


 この戦いが、実証されたのが、戊辰戦争。

 新政府軍は少女達だけで、空戦をさせた。

 新政府軍は男を地上戦のみに集中させ、旧幕府軍を打ち破る事に成功した。


 高杉新作の辞世の句。

 【(男だらけの)おもしろきこともなき世を(乙女で)おもしろく】

 この世界では、男女共同参画社会の礎とも言われている。


 っと思っている間に、私に勲章をくれる方の屋敷に着き、侍従に案内される。

 やがて、門松の金色の紋章が描かれた扉が開かれ、御簾が上げられる。

 其処には、長い黒髪に黒い瞳、十二単を着た美女が座っている。

 彼女こそ、ヤマト国の元首である、那夜竹なよたけ輝夜かぐや様。


 誰もが知っている、かぐや姫の物語、あの物語には、続きが有る。

 月の軍団に、連れて行かれたのは、かぐや姫の忠実な影武者だった。

 影武者は、大気圏を抜けた所で、躰に付けていた爆薬で月の船ごと自爆。

 帝は、富士山頂に上り、本物の輝夜姫と炎の前で幸せなキスをし、結婚した。

 

 どうして、それを知っているかって?そういう設定のゲームキャラだからさ!

 

 「東郷、お主の戦いを魔導具の映像で見た。妾は千年、生きていたが此れ程、清々しい勝ちを見たことが無い」


 あーどうやら、この方の設定は、生きている様だ……

 そして、輝夜姫と帝の間には、多数の子供が生まれた。

 何れも、美しい娘達で、引く手数多だった。

 その娘達から生まれて来た娘達も、また美しい女子であった。

 時代が変わり、子孫達は、囲われた生活では無く、自由な生活を求めた。


 其処で、娘達を臣籍降下させ、千年ぶりに、那夜竹なよたけ輝夜かぐや様、本人が復権した。

 ただ、煩わしいまつりごとは議会に任せ、こういった叙勲といったまつりを担当している。 


 「ハハッ、ありがたき、光栄に御座います」


 「汝の功を認め、大勲位竹花大綬章と功一級金鵄勲章を授与、伯爵を与爵、次いで元帥府に列する」


 「ハハっつ、全ては国と陛下と臣民の為に」


 元帥専用槍、那夜竹なよたけ家の紋章の紫門松が入った、金色の竹槍が渡される。


 【空艦少女大戦】、一度はやってみたい事ランキング一位。

 それは、ヤマト国の元帥専用槍で、投げ槍をしたい。


 これが、自分の手元に有るという事に、思わず手が震えた。

 

 「流石の、軍神東郷でも震えるか?あと、空軍大臣の山本権兵衛やまもとごんのひょうえが、会議室でお主に会いたいそうだ」


 「御意」


  適当に、勘違いしてくれた。あと、空軍大臣が私に会いたい?

 そうか……思い出した。ルーシア艦隊と戦う前、山本権兵衛やまもとごんのひょうえと出会う章での事。

 その章で、新規の新しい船を考えて来れって頼まれてた……。

 生き残ってたら、渡すって約束したよな……何か、良い物あったっけ?

 

 ――合った!

 将来のワシントン軍縮会議を回避し、尚かつこの国の方針を変える方法が!


 私は、部屋から退席すると【メニュー】を開く。

 【設計図】の所を押すと、多数の設計図が表示される。

 【空艦少女大戦】は多数のイベントとコラボしており、イベントをクリアすると色んな船の設計図が貰える。


 【みらい】と表示されたコラボ艦の設計図を見つけ、ボタンを押す。

  

 全長:171m

 全幅:21m

 深さ:12m

 喫雲:6.3m

 基準排気量:7,000t

 満載排気量:9,000t

 機関:乙女エンジン

 最高速力:四十ノット

 レーダー:鷹の目フォークアイ

 砲塔:127mm単装速射砲 

 ソナー:鵜の目コーマットアイ

 魔術戦装置:ジャミング装置

 魔法式ミサイル(前後計九十):スタンダード・アスロック対空ミサイル

 噴式ミサイル:対艦ミサイル

 噴式ミサイル:地上攻撃用

 3連装短魚雷発射管×2

 20mm機関銃×2

 

 手元に紙に設計図とスペックが現れた。大体は、こんな感じ。

 で、名前は何にしよう?

 そうだな、操作が簡単だから、簡単艦イージスかんで良いな、と思いながら扉を叩いた。

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