少年と祝福3『スッパーンッ!!!!』
「負けるかもしれないと思ったからじゃないからな! そこを勘違いするなよ!」
フワフワ浮かび上がりながら捨て台詞を吐く少年。
こいつ、空飛べたのか、ずるいぞっ!
逃がしてなるものか。
「次に会ったときは見せてやるからさ、女神様に与えられた本当のチートってやつを。記憶を完全に引き継げなかった出来損ないのシミラーと違って僕は本物の選ばれし者だからね」
ちょっと待て、女神様だと?
どういう意味だ? こいつ、女神様を知っているのか?
まさかこいつも俺と同じように女神様の手によって……?
「お前は――」
「ああ、君は知る必要のないことだよ。すべては選ばれた存在である僕たちだけが知っていればいいことだから」
「おい、待ちやがれ!」
魔法で撃ち落としてやろうと思ったが、魔法が使えなくなる粉の影響で俺は何もすることができなかった。
くそ、こんなところで初めて粉の効力を実感することになろうとは!
「行っちまったか……」
「くっ……ダイアンの仇を取れなかった……」
結局、少年が豆粒大の大きさになって空の彼方に消えていくのを俺とエヴァンジェリンは指を咥えて見送るしかなかった。
◇◇◇◇◇
その後。
町からやってきたニッサン領主の騎士たちに輩どもを預けて連行してもらう。
ジンジャーやレグル嬢たちは予定通りエルフの里と話し合いをするため森へ向かった。
デリック君も治療をして復活したので同行していったよ。
残ったのは俺と意識を取り戻したシルフィーの二人。
「じゃ、俺たちは王都に行くとするか」
「え? 王都に行くの? ニッサンって町に行くんじゃ?」
「俺は人間の魔法学校で情報収集の途中なんだよ。今はそっちに住んでるんだ。魔法も教えてもらえるしな」
俺がそう説明をすると、シルフィーはきょとんと首を傾げる。
「人間の学校? なんで人間なんかに魔法を教わってるわけ?」
そりゃ里で授業を真面目に聞いてなかったからさ。
正直に言ってもよかったが、再会したばかりで恥をさらすのは躊躇われた。
「その学校にさっきのやつらの協力者がいるらしくてさ。レグル嬢のツテを頼って転入させてもらっていろいろ探ってるんだ」
「ふーん、そうなんだ。ねえ、それってわたしも一緒に行っていいの?」
「ああ、できれば一緒にいてほしい。ああいうエルフを狙う組織がある以上、どこで何があるかわからないだろ? 自由に旅をさせてやれないのは申し訳ないけど……」
あいつらのことが解決するまでは危険があるとわかっておきながら別行動はさせたくない。
「そっか、わたしが心配なんだ。一緒にいてほしいんだ……」
シルフィーはなんかニヤニヤしている。
これは了承ということでいいのかな。
「じゃあ、ほら」
俺は背中を見せて親指でクイクイッと乗るように示した。
「えっ……ここでするの? うん、そうね。わかったわ……ちょっと待ってね……」
シルフィがどこか覚悟を決めたような口振りで答えた。
いや、ただ背中に乗るだけだぞ……?
そんな大げさなことなんて――
「ジョウオウサマとお呼びッ!」
スッパーンッ!!!!
「アイテーッ!」
俺は幼馴染みに背後から鞭で思い切り叩かれた。
なぜだ!? というか、鞭って意外と痛いのな。
鋼の装甲を突き抜けて魂へ直にダメージが響いてくる感覚。
ディーゼル君も、こんなのを何回も食らったなら恨んでくるのも無理ないかもしれん。
それが逆恨みだったとしても。
俺が無知でした……。
鞭だけに、なんてね?
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