第5話魔法

アレシアの装着していた黒鋼が戦闘の後すべて壊れてしまった、呪法の呪いは強力で対象物を絶対に逃さない。

「黒鋼がすべて壊れるなんて」

アレシアが途方に暮れている中ゼウスの飛んで行った穴からゼウスが顔を出した。

「無事か?……へーそんな顔してたんだな、意外とかわいいじゃん」

この時が初めてゼウスがアレシアの顔をしっかりと確認できた、書物庫のときはゆっくり見ている暇もなかったからだ。

「ありがとう、あなたの方も勝ったのねあの大男に意外だわ」

(こいつやっぱりただの魔法使いじゃない、だいたいこの距離から落ちてなんで当たり前のように無傷なの?)

「なんだぼけ~としてどっかやられたか?」

「な やられてないわよ」

「そうかならよかった」

「心配してくれてどうも」

騒ぎを聞きつけた残党がすぐ部屋に駆けつけたが死体で転がっているキレスを見て即座に降伏した。

ゼウスは力を見せつけてこのアジトの新たなるボスになった、初めて人を統治するため不安も大きかった。ゼウスの目指す世界は不幸と貧困のない世界を目標にしていた。しかしそれがどのような結果をもたらすかは誰にもわからない、もしかしたら全く違う世界を目指すかもしれない。

まずゼウスは奴隷たちの要望を聞いて回った、そしてほとんどのものが休みがほしいというごく簡単なものだった。だから労働時間の大幅な改善を施した、そしてこんな地下より外の街を復興しようと提案したのだがどうやら問題があるらしい。ここはレオスという人に似た強力なモンスターの縄張りらしい、肌は雪のように白く瞳は赤い。尻尾が生えており剣や矢もその肌には全く通じないらしい。そんな連中が夜になるとここ一帯を徘徊する、これが無法地帯の原因だった。

「ではそいつらに会いに行ってみるか」


「その前に魔法の事を聞かないとな」

ゼウスはミルスの塔に上って行った、そして気になることがひとつ合った。

「なんでお君までくるんだよ、てかなんでまだいるんだ?」

「盗賊団を皆殺しにするつもりでたきたのにあの盗賊どもを許すの?あいつら面白半分で人を殺す奴らよ?」

「言いたいことも分かるが今はまだ生かして仕事をしてもらう、それに殺すのはいつでもできる、また問題を起こすようならすぐに殺すさ」

「どうだか」

「まだ国に帰らなくていいのか?」

「大丈夫、それにまだ一日も経ってないわゲートは最大3日まで空いてるはずよ」

「ゲート何のことだ?」

「何でもないわ気にしないで」

ミルスの部屋に着いて扉を開けた。

「ミルス話を聞きにきたぞ」

「あらようこそしかしビックリしたわあの2人を倒すなんてね、あら後ろの子は?」

「アレシアですよろしく」

軽く頭を下げた。

(うわ綺麗な人)

「それで魔法のことについてどこから知りたいの?」

「前に話していた属性と特性のことに着いて」

あいているソファにゼウスが座りその横にアレシアが座ったがそわそわして落ち着きがなかった。

「そう、じゃ属性について簡単説明するわ、まず属性には大きく分けて火、水、氷、雷、光、闇があるの。それぞれの得意不得意があるわ、まず火から説明しするわ。火はみんながイメージしてるそのものよ何かを燃やしたり照らしたりできる、そして次に水ねそれもみんなが知ってる水そのものよ。何に使うかは使う人の目的によって変わってくるわね。氷は造形に使うことが多いわ、そして雷これは特殊ね雷は下手したら自滅を招くのよまだまだ未知の属性だわ。そしてここからは癖がある光と闇よ。」

本当に簡潔に図式を使って簡単に説明してくれた。

(ここまでの説明を聞くと全部自然に関係してるな)

「おーい聞いてる」

ゼウスが考え事をしていてたらミルスが魔法の話を聞いてるか確認してきた。

「ん あぁ聞いてますよ」

「んじゃ続き行くわよ、光と闇この二つはまったく違う性質なの、まず光はどこかを照らしたり目をくらませたりできるもっと戦闘用の使い方は後に説明するね。そして闇これは物理になるのよ、つまり他の魔法と違って長時間存在することができるの。例えば闇魔法で丸いボールを生成すれば蹴って遊ぶこともできるし相手にぶつけることもできる。それに闇はこの世の物理法則を無視することができるの、ありえない形状にしたり力の作用を逆転させたりできるわよ。まぁどんな魔法も使う術者に凄い作用されるわ。なんども言うけど本当に使う人によって違うのよ。簡単に説明したけどわかった?」

(なんとなくはわかったがやはり実践が一番だな)

ちなみにアレシアは魔法の話より標本のモンスターに夢中だった。

「大丈夫ですわかりました」

「そう後は特性についておしえておしまいよ、でもその前に魔法の原理について教えておくわよ!」

(え)

「魔法は使うもののイメージによって形になるの、最初は難しいかもしれないけど使い慣れてくると手足を動かすように発動できるようになるのよ。じぁ体のどこからそのような力が出てくるかというと、心臓からくるの心臓には生命を活動させるエネルギーが常に生まれてるの。そのエネルギーを少し分けて使うのが魔法、だから誰もが魔法を使えるのよ。死人だったら無理だけど、だから魔法を使いすぎると心臓の活動が停止して死んでしまう。みんなは生命力とか生命エネルギーって言ってるよ」

「なるほど では体が衰えるにつれて力は弱くなってしまうのですか?」

「まぁそのとおりね、でも意外と老人の方が強かったりするわよ」

「なぜですか?若者の方が生命力もあり心臓の働きも強そうですけど」

「それは力の出し方の違いよ、若いうちはどうしても力にムラが出て必要以上にエネルギーを消費してしまうからよ。凄い頑張って魔法を発動させたのにボヤが出たぐらいとかよくあるのよ。だからみんなすぐ魔法から離れてしまうの、使いこなしたら素晴らしいのに!」

「はぁそうなんですか、質問なんですが心臓の力ででる火力は変わるのですか?」

「それは変わるわよ、日ごろから体を鍛えたりして健康な人ほど火力が出るわ。だから魔法使いは常に体のメンテナンスも大事なの、病気や怪我なんてしたらいざというとき力が出なくて大問題だわ」

「しかし老人の方が強いなんてますます考えにくいですよ」

「実は魔法なんてエネルギーをちょっと、本当にほんの少しで凄い力が出せるのよ。でも人間の寿命は短いから力を使い方を完全にわかった時にはもうお年寄りになってしまうことが多いの」

「なるほど あなたはどうなんですか?」

「私?私もまだまだかな」

そんなミルスの目はどこか悲しげだった、過去に何かあったのかもしれないがとても聞くきにはならなかった。

「後は力、エネルギーの伝達の法則も教えとくわね、知ってるといろいろ便利だから」

「伝達の法則もあるんですか」

「ほんとに何も知らないで魔法を使えてたのね、ある意味凄い才能よ」

「はぁそれはどうも」

「それじゃ本題に入るわね、エネルギーは線または道のようなものに沿って移動するの」

ゼウスの頭の上に?が浮いていた。

「私たち人型が魔法を使うとき力は心臓から出るのはわかるわよね?」

「それはわかりました」

「でも力を出しただけじゃ意味がないの、その力を外に出して形にしないといけない、あなたはその外に出すときどこから力を出しやすい?」

無意識に視線は手にいっていた、言われてみれば確かに胸や二の腕など中途半端なとこで出した覚えはない。

「手など足などが多いです、イメージがしやすく火力も出しやすいですし」

「では心臓は胸にあります、そこから力はどうして広い体の中を迷子にならずに手にきちんと来るのでしょうか?」

「それは……考えたこともなかったです」

「正解は血管をたどって来ているのよ、頭の中のイメージが終わってその命令が心臓に伝わってさらにそのエネルギーは血管を通って放出する場所にたどり着くの、体が無意識に操作してくれてるんだけどね」

「ほーなるほど」

「わかってくれたようでよかったわ、頭の隅ににでも置いておいてね」

「質問なんですが自分の体からじゃなく一定以上離れたところに魔法を発動するのはどういうことなんですか?」

「は?ゼウス君もうそんなことができるの?」

「いやそういうこともできるのかなぁーって質問ですはは」

「なんだそうなんだ、びっくりしちゃったよ。できないことはないわよその原理は視線よ」

「視線ですか?」

「力は線をたどって移動するから目から視線を通してその場所で形にできるのよ、でもこれはかなり難しいわ線の力もよわいし発動するまで時間がかかってしまうの」

「あまり実践向きじゃないですか?」

「そうねあまりお勧めはしないわね」

「そうですか」

ゼウスは少し考え込んでいた、さっきつかったばかりだったからだ。確かに発動させるには敵が長時間その場にいてもらわないといけなかったしかし脅かすなどいろいろな使い方があるんじゃないかと思っていた。

「そいえばゼウス君杖はどこに隠しているの?」

「杖?持ってませんけど」

「え?!」

「え?」

「魔法発動するとき素手から出してるの?」

「さっきも手って言ったじゃないですか」

「まさか素手だとは…火出すとき熱くないの?」

「全然」

ミルスは言葉を失った、火を浴びて熱くないとか言っている人間が目の前にいたからだ。

「まぁ世界は広いからそんな人もきっといるわうんきっと」

ミルスは自分を無理やり納得させて終わらせた。

「魔導士はみんな杖をもっているんですか?」

「たぶん持っていないのはあなただけよ」

ミルスは地面に膝をついてありえないって顔をしていた。

「杖がどうしたんですか?」

一方ゼウスはきょとんとしていた、おかしなことを言ったつもりはまったくなかった。

「あぁ、杖の事は忘れて」

小さな声でそっと呟いた。

「そうですか」

しばらくしてミルスは復活して次の説明に入った。

「それじぁ形の特性について説明するね。特性は大きくわけて長距離、連射、放射があるの、わかりやすように火で説明するね。まず長距離、火で長距離は広がらずに一直線に進む、そして連射これは小さな火の弾を連続で発射する感じ。そして放射、これはあまり距離はないけど発動した所の広範囲に火の海を作り出せるの、どうわかった」

頭の中でイメージはしやすかった、これが魔法を使うと気の基礎になるのだがある一定の神イレギュラーはあまり意味のなさないものだった。

「なるほどどんな感じかはわかりました」

それでもゼウスはイメージができてきた。

「それじゃさらに細かく説明するわよ!」

ちなみにアレシアはぐっすりと寝ていた。

「いや~話が長くなっちゃってごめんね~」

ミルスが手を合わせて謝ってきたが頼んだのはゼウスだから謝る必要なんてなかった。

「いやとても分かりすかったですし助かりました」

「あと私と話すときは敬語使わなくてもいいよ」

「……そうするよ」

「さっそくだねぇ~」

「じゃ私は少し盗賊どもの様子を見てくる」

「あいつら頭悪いから大丈夫だと思うけど」

「そういえばあなたは信用しても大丈夫なのかな?」

「これだけ話してるのにまだ疑うんだね、大丈夫裏切らないよ私の魔法が研究できるならね」

「できなくなったら反乱されちゃうわけか」

「そいゆうこと」

笑顔とウィンクで返してきた。

「研究が継続させるには特に何をしてればいいんだ?」

「それここに書いてあるからそれだけを守ってくれれば全然大丈夫」

ゼウスは壁に掛けてある紙に目を通した、静かにする、勝手に部屋に入らないなど簡単なものばかりだった。

「この程度なら大丈夫だな」

「もとからここにいる奴らも理解してるから大丈夫だよ、私を魔女って言ってるようだしね」

(確かに魔女だよな)

「私は下に降りてこれからの準備でもしてくるよ。ほら行くぞ」

ゼウスは寝ているアレシアを体を揺すって起こそうとするが爆睡して起きない。

(駄目だなこれは)

「寝かしていていいんじゃない?起きたら下に行くよう伝えておくわよ」

「助かるよ」

ゼウスは部屋を後にして階段を降りていると外が少し騒がしいのが気になった。

降りたところに何人かの奴隷が集まっていた、ゼウスに感謝を言いにきたらしい。

「本当にあんたのおかげで助かったありがとう」

代表者の老人が涙ながらに感謝の言葉を並べた、そしてその中の若者の一人が質問してきた。

「これからあの盗賊たちはどうするんだ?まだここにいるのか?」

「そうだなしばらくここで警備してもらうよ。怯えなくても大丈夫だあいつらはもう君たちに暴力や暴言は許さないから」

まだ半信半疑だったがとりあえずは納得してもらった、だからさらに細かくこれからのこの国のシステムや経済などを細かく説明していった。まず奴隷たちにはまだ完成してない作りかけの部屋を完成させてもらうことにした、そして盗賊たちはその見張りと警備を命じた。見張りとは奴隷たちではなく侵入者にたいしてだ、そして奴隷たちは3時間ごとに休憩を与えて警備も同様にした。休憩中の警備は交代制にしてある。そして仕事の成果に応じて報酬を払うことにした、すべて仕事をすればコイン一枚そして今日の成果に応じて追加が払われる仕組みだ。そのコインは食事、休憩を多くしたりなどそれぞれの要望を叶えるシステムだった。まだ初心者であるゼウスにはこれが精一杯だった、説明をしているとアレシアが起きて降りてきた。

「そろそろ帰る」

「そうか気おつけて帰るんだぞ」

(それだけ?!)

「あとで君の国にいってもいいかな?」

「私の国じゃない」

アレシアはすたすたと出口の方に歩いて行った。

「私も少し用事があるので出かけてくる留守に何かあったらミルスに報告してくれ」


ゼウスはアレシアの後ろを付けていた。アレシアの言っていた扉ゲートを見てみたかったからだ。

(道案内よろしく頼むよ)

数分歩いてあの吊り橋の所まできたところでアレシアが何か焦り始めた、周りをうろうろしていてもう呆れたゼウスが声を掛けることにした。

「君は何を探しているのかな?」

アレシアが急いで声がした方に視線を向けたらゼウスが突っ立っていた。

「なんであなたがここにいるのよ!!」

ゼウスが正直に話し始めたら警戒心があがってしまった。

「最低ね」

「悪かった」

ゼウスがぺこりと頭を下げた、これで許してもらえたようだ。

「それでなんでここで慌てていたんだ?」

「ここにあったはずの扉ゲートがないのよ!本来なら3日は開いているはずそれなのにもう閉じられるなんてありえない」

「捨てられたんじゃないのか」

この言葉にアレシアは激高した。

「そんなわけない!!!」

その怒号は森中に響き渡るほどだった、ゼウスはあっけらかんとしていたがすぐに我に返って謝罪した。

「すまない冗談を言いすぎた」

「じぁ馬を1頭貸して」

「馬なんていたかな、いたらすぐに貸すよ」

「ありがとう」

そしてまた地下に戻って馬はいるかミルスに聞いてみたが……

「馬?一匹もいないわよ」

「え?」

「もともと食料調達もあまり遠くにまではいかなかったから飼ってないのよ、餌代もかかるしね」

「なるほど」

ここでゼウスが一つ提案をした。

「これから私はアレシアとルカンデラの都市ステラスに向かう、その間留守を頼みたい1か月以内には帰ってくる、頼む」

「いいわよ1か月だからね」

「助かるよ」

これからまずアレシアと共にルカンデラに向うことをみんなに話してミレアがいれば大丈夫という意見が多く彼女が意外と信頼されているのが驚きだった。

「さて行くか」

「ちょっと待って、歩いて行くの?」

「そんなはずないだろ…馬か」

「何を言っているの?」

「少し離れてくれ」

ゼウスが人間からだんだん形が崩れていった、再び白いスライムのような形状から馬のような形になっていった。

「は!?」

そして真っ白い芸術のような馬が出来上がった。

(こんなものかな)

馬のままだと喋れないため首を振ってアレシアに乗れと伝えていた、一方アレシアは空いた口が塞がらなかった。放心しているアレシアをゼウスは顔えお尻尾で叩いた。

「は!」

アレシアは我に返った。

「ねぇその前にいろいろ聞きたいんだけど」

(後にしてくれ)

ゼウスは地面に字を書いて伝えた、枝を加えて初めて書いた割にはうまくいった。

「じゃ乗るからね」

よいっしょとゼウスの背中にどすっと座った。

(重)

「まさか重いとか思ってないでしょうね?」

ゼウスは首を横に振って歩き出した。

(馬になって初めて歩いたが意外と歩けるな、4足歩行の動物はもう完璧だな)

しばらく会話もないというより会話ができないため静かな時間が続いた、モンスターなどの気配もなく順調に進んでいる。

「ねぇ少し止まって」

アレシアが急に止まってくれと言ってきたので草が生い茂る中止まったらアレシアが背中から降りてきた。

「少し待っててすぐ戻るから!」

走って奥の茂みに走って行った、少しゼウスも疲れたので人の姿に戻って座り込んでいた。

「人の姿がすっかり定着してしまったな」

(アレシアは急いでるのになんの用なんだか)

3分後アレシアが茂みから走って戻ってきた。

「ごめんおそくなった…人に戻ってる」

「人に戻ったら何か問題があるか」

「問題ないわよモンスターだったのね」

「モンスターねぇ ちなみに私はなんて種類なんだ?」

「知らないわよ、でも言葉を話して人間に変身できるなんて聞いたことないわよ」

(ルカンデラに帰ったら殺さないといけないかもしれない、こんな化け物がいるなんてもし敵になったときの事を考えないと!)

「もしもーし私の話を聞いているか?」

「え?!も、もちろん聞いてるわよ」

「それでこの先の事についてだがもう少しスピードを上げるぞ夜になると変なのももでるかもしれないからな。アレシアの疲労具合で休憩をはさむが次は何時間後がいいんだ?」

「あなたは休憩いらないの?」

「まだ疲れたことがないんでな」

アレシアはゼウスが何を言っているのか意味がわからなかった。

「さてそろそろ行くぞ」

「質問なんだけどどこから服とか持ってきてるの?」

「持ってないよここで作ってるんだよ」

またアレシアは意味が分からなかった。

(あんまり能力は見せびらかさないほうがいいな)

「休憩したくなったりまたトイレに行きたくなったら言ってくれ」

「待って!何でトイレに行ったのわかったの!?」

アレシアの顔が真っ赤になっていった。

「勘だよ」

(本当は臭いだけどな)

「へ、へぇ~」

「スピードあげるから速く乗れ」

ゼウスがまた白い馬に変身した、アレシアも荷物を担いで急いでゼウスの背中に乗っかった。そして今までゆったりと歩いていたがここでいきなりゼウスが走り出した。

「ちょ!うそぉぉぉぉ!!」

アレシアの絶叫を無視して風のように森の中を走り抜けていく、アレシアも必死でゼウスの背中にしがみつく。

(とてもいい気分だどこまで早く行けるのかな!)

ゼウスはさらにスピードを上げて走って行った。




4時間後…昼過ぎになったので食事を探すために止まったらアレシアが背中で伸びていたから振り落とした。

そしてアレシアの顔をぺしぺしとたたいて起こした。

「本当に死ぬかと思った」

ぜぇぜぇと息を荒くしながら生きてることに感謝した。

「さて腹も減ったろ、ご飯にするか」

「ここどこなの?」

「近くにモカクロという村があるからそこによっていこう」

「モカクロ…いいわ行きましょう」

正規の道を通りながら近くのモカクロを目指しながら歩き始めた、沈黙が気まずくなったゼウスが口を開いた。

「アレシアは年はいくつなんだ?」

「21よ 何?いきなり」

「少し気になったからな、あの時付けていた装備はどうしたんだ」

「黒鋼の事?私が騎士に任命された後国王から譲り受けたのよ」

(アレシアの戦闘力はかなり上位ということか)

「へぇ~なんでアレシアがもらい受けたんだ?特別な理由でもあるのか?」

「黒鋼は女専用の装備だったのよ、女騎士では私が一番強かったのが理由。前にも装着者は何人かいたらいしいけどね」

(黒鋼壊れたことどう報告しよう…)

「黒鋼みたいな装備は他にいくつも所有しているのか?ルカンデラは」

「これ以上はもう機密だから教えないわよ」

アレシアの目が鋭くゼウスを睨んでいた。

「ゼウスの方が謎だらけじゃない、今まで何してたの?」

「寝てた」

ゼウスは自分の発言であることに気付いた。

(そうか寝ていたってことは私はあの時疲れていたのか)

「何それ?生まれは?」

「わからないんだ」

「ねぇ自分の事がわからないの?」

「そうだな知っていることより知らないことの方が多いかもしれない」

「何それ」

「私にはまだ何もないのかもしれない」

その言葉にアレシアはどこか寂しさを感じた。

「それにしても景色が開けてきたな」

森を抜けて広い草原にでた、そこは一本の道がどこまでも続いてるように見えた。草原は風に吹かれ静かに揺れている、空も雲一つなく快晴で草原と非常にマッチしている。風がとても気持ちがいい。

「いい場所ね」

「そうだな」

「ほらもう見えてきたぞ」

目標のモカクロ村が見えてきた、人口は50人ほどの小さな村であり自給自足の生活をしている村だがなんだか住民が慌ただしく動いているのが見えた。

「なにかあったみたいだな」

「え?!この距離から見えるの!」

「飛ぶぞ」

アレシアの体を脇に担いで空高く飛んだ。

「また勝手にいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

そして村から少し離れたところに着地した、誰かに見られたら面倒なことになりかねない。

「誰にも見られてないかな」

「何をするか言ってから行動して、はぁはぁはぁ」

村へ急いで走って行った、そこでは何やらハンターと村人で揉め事が起きていた。

ハンターは2人組で両方男で武器を構えているかなり興奮している様だった。そのうちの一人の服装はクロのジャケットと茶色のズボンそして背中に巨大な鞘を背負っていた。もう一人も似たようなかっこをしていたが武器は腰に付けていて短刀が2つ腰に下げていた。そして顔が隠れるほど帽子を深く被っていた。

「どういうことだ!!金を払え!モンスターを討伐しただろ!!」

「わかったから剣をしまってくれ頼む!」

ゼウスが介入するか迷っているとアレシアがなんの迷いもなく会話に割って入った。

「何の騒ぎですか!」

ハンターの一人が反応した。

「誰だお前は」

「ルカンデラ王国十騎士の一人アレシア ムーンです!」

十騎士の一人である証のバッチも見せたがゼウスはそれを初めて見てた。

「そうか!それはいいあんたこの国のお偉いさんだろ、代わりに払ってくれや」

茶色いジャケットの男は相変わらずおしゃべりだが隣の帽子のハンターはずっと無言のままだ。

「まず討伐の証を見せてもらえます?」

ハンターは討伐した証として対象のモンスターの一部を取ってくるのが規則で首、耳、歯など死体からしか取れないものしか認めていなかった。

「ほらこれだよ」

近くにあった袋から1mほどの巨大な角を取り出した。

「それで村が支払う金額はいくらなんですか」

アレシアが質問すると村人の村長らしき人物が奥から出てきた。

「すまないお嬢さんこんな下らない揉め事につき合わせてしまって。最初は200ギル払う約束だったんだ、しかし村にそんな大金はどこにもないんじゃ・・・すまない」

アレシアがあきれ果てていた、かれらはどこにも所属しないワンマンアーミーで国に嫌がらせをしてくる輩もいるか雇うときは注意してほしいと呼びかけていた。

「どうしてそんな不手際が起こるんですか?」

「俺が話を盛ったんだ!」

最初にハンターと言い争いをしていた中年の男がどうやら犯人らしい。

「俺たちはただ働きかよおいぃ!!」

ハンターもかなり頭にきていていつ村人を殺すかわからない状況だったアレシアも持っていれば払いたいがもちろん今は1ギルも持っていない。

「ほら200ギルここにあるから持ってけよ」

ゼウスが後ろから200ギル入ってある金を男のてのひらにポンと置いた。

「仕事お疲れさんこれで問題は解決だな」

周りはみんな固まっていて状況が呑み込めていなかった、そんな中おしゃべりハンターが中を確認して全額あるのを確認した。

「お、おう確かにもらったぞ、行くぞ」

ハンター達はまた仕事を探して旅に出て行った。

「あ、あの~」

村人たちは全員怯えていた、知らない銀髪の男が大金を代わりに払ってくれたのだ。そのかわりにどんなものを要求してくるか分かったものじゃなかった。

「ねぇあの大金はどこにあったの?」

アレシアの質問にゼウスは正直に答えた。

「作ったんだよ」

「は?」

「後で説明するよ」

ゼウスは軽くアレシアの肩をポンと叩いて村人の方に歩いて行った。

「村長あなたのお名前をお聞きしてよろしいでしょうか?」

ゼウスは村長の前で軽くお辞儀をした。

「私の名はエアハルト、先ほど大金を肩代わりをしていただきありがとう。しかし…」

ゼウスは慌てて否定した。

「いやいやお金はもういいです、その代わりここ周辺の地図と食料を分けて頂きたいのです。後もう嘘はつかないようにしましょう」

ゼウスは嘘をついた村人の方をちらっと見た。

「本当に申し訳ありませんでした!!」

男は泣きながらエアハルトとゼウスに土下座した。

「本当にこんな量でいいのかね?」

「ええ大丈夫ですよ、アレシアもこれだけあれば間に合うよな」

袋の中にはおにぎりが5個ほど入っていた、旅を始めた時は狩りをして食料を調達することしていたがきちんとしたものを食べた方が健康にいいと気を使ったものだった。

「私は充分だけどゼウスの分はいいの?」

「私は大丈夫だよ」

「エアハルトさん地図と食料ありがたくいただきます」

「いやいや助けてもらったのは私たちのほうじゃありがとう」

ゼウスは人々の繋がりや助け合いというものを始めて実感した。

「さてそろそろ行くよアレシア」

アレシアとゼウスは村を後にした。

「ねぇさっきのお金どうしたの?作ったてどうゆうこと?」

ゼウスは自分でも説明できないから実演して見せた、ゼウスの手のひらから金が溢れてきた。その光景を見てアレシアは腰を抜かした。

「な、な、なえ、えええぇぇぇぇ!!」

大声を上げるアレシアの口を急いで手で塞いだ。

「静かにしろ!周りに何がいるかわからないんだ」

アレシアはうんうんと頷いた。

「ねぇどうなってるの?魔法?」

軽く頭を捻ってさぁと答えた、アレシアはゼウスが作った金貨を確認していた。本物と何一つかわりない出来だった、この出来栄えなら誰も疑わないだろう。

「ねぇその魔法何回もできるの?」

「できるよ」

(この魔法が普及したら経済が崩壊する)

「この魔法他に使える人はいるの?」

「いやいないと思うよ」

「そう…なんだ」

「さてそろそろ変身するかな」

ゼウスはまた銀色の馬に変わった、アレシアもすでになれた手つきで乗り始めた。

日も落ち始めてきたので今日はここでテントを張ることにした。

「さて家でも作るか」

アレシアは夕食を探しに行っていた、弓が扱えるらしく作って狩りに向かった。テントを張る場所は近くに川が流れており見晴らしもよく敵の接近も砂利の音でわかるからかなり快適な場所だ。

ゼウスは木造の住宅を作り出した、簡単な作りで一部屋とドアしかない。

(一晩泊まるだけだ、こんなもんでいいだろう)

魔法で火を焚いて温まっているとアレシアがイノシシを2匹ほど狩ってきた。

「何この家?」

「創造した」

「は?」

またアレシアの頭が混乱してきた。

「もういい今日は驚き疲れたわよ」

「はははは!!」

ゼウスの高笑いにアレシアは少し驚いて後ろに下がった。

「いやすまない、わかるよその驚き疲れたって感じ、私もつい最近あったからな」

「ゼウスでも驚くことなんてあるのね」

「おそらくこれからまだまだ驚くことばかりだと思うがな」

アレシア自分で取ってきたイノシシをやいてかぶりついていた。ゼウスはまだまともな食事をとったことはなかった、だいたいお腹が全くすかない。睡眠も同じく眠くならなかった。起きたばかりの頃はあんなに眠かったのに今はまったく感じない。

「ゼウス食べなくていいの?」

「あ あぁいただくよ」

とりあえず食べておくことにした、頑張ってとってきてくれたアレシアの気分を害するような行為はしたくなかった。

(このペースなら3日ぐらいでステラスに着きそうだな)

「ねぇこの家部屋一つしないの?」

「そうだよ」

「一緒の部屋で寝るの?」

「何か問題あるか?」

「いや別にその」

「なら早めに睡眠をとっておいたほうがいい、火は私がみてるから」

「そう、じゃ遠慮なく」

その夜ゼウスは一晩中星空を眺めていた。

(綺麗だ)

ゼウスは自分のことについて考え込んでいた、創成魔法に疑問がいくつもあった。まず作るにはゼウス自信が作る物を熟知していなければならない、剣や鎧、武器を作るのは簡単だった他にも果物を作ることも成功した。実際に食べることもできたしかし料理を作ることは出来なかったこれはゼウスが理解してないからかもしれない。他にも木や葉っぱ自然物も作るのは成功した、そして人を作った。正確には人の体を作ったのだ、人の体については熟知していたからまったくその通りに男性の体を作った。体の細部も完璧なはずだった、しかし心臓が動かなかった。それはただの綺麗な死体にすぎなかった、ゼウスは動き回る意思を命を持った人間を作り出したかった。だが出来なかった、ゼウスは命を理解してないからなのかだと考えた。しかし命とはなんだ?ここでは当たり前のように命が生まれてきている。そしてまた失う命もたくさんある、心臓は最初どうやって動いているのか?やはり男女の契りがないと生命は作り出せないのか?こんな命に対する疑問が延々とゼウスの頭を掻きまわしていた。

同時刻

ミルスはゼウスに頼まれた留守をしっかり守っていた、そしてある侵入者を感知していた。

(珍しいわね天使の侵入者なんて)

ミルスは急いで魔法を発動して感知した場所に向かった。ミレスは地下都市全体に扉を設置しているため瞬時に移動できる、さっそく扉を発動しある場所に向かった。そこには白い羽が生えた少女が立っていた、その容姿はキレスに連れ去られた少女とそっくりだった。

「あら帰る前に少しお話しません?」

ミルスが念のために杖を取り出した。

「さすが感知するのがはやいねぇ お ば さ ん」

「その羽毟るわよ」

ミルスも笑顔で返す。

「ここに侵入した目的はなに?」

「言うわけないでしょ」

「私もある人にここを任せられてるから危険分子は消さないといけないのよたとえ天使でもね」

「あの銀髪の男でしょいやー凄い強かったねびっくりしちゃった」

「ずっと見ていたのね」

「まぁね!」

白い翼を大きく広げて夜空に飛んで行って消えていった。

「バイバイおばさ~ん」

(敵対する気があるならもう行動をしているはずだし今回は見逃してあげるわよ)

おばさん呼ばわりされたことにかなり堪えたミルスであった。



3日後

アレシアとゼウスは王都ステラスまであと1時間程度で着くところまで来ていた。

(予想以上に早く着きそうだな)

この旅でアレシアとゼウスはかなり仲良くなっていた、モンスターとの戦いや協力で連携などもできるようになっていた。アレシアは昔から狩りをしていたらしく弓などを手慣れたように扱って身のこなしも軽く猿のように木を登って移動していた。ゼウスもアレシアを信用して剣を2本渡していた。

「ねぇここで少し休憩しない?」

馬のゼウスは頭を縦に振って承諾した。

「あと少しだぞどうした」

「股がすれていたいのよ!」

はぁとゼウスが大きい溜息をこぼした。それから10分程度休んでいたらどこからか何かが焼ける臭いがしてきた。

「少し焦げ臭くないか?」

「え?わかないんけど」

「少しよってみるか」

「わかった」

アレシアは少し不安だった。ゼウスの後をついていくと黒い煙が見えてきた、嫌な予感が的中した。1つの村が焼き払われていた、しかも人の死体が一か所に集められ丸焦げになっていた。

「誰がこんなことを!!」

アレシアはこみ上げてくる怒りを自分の中に抑え込んだ。そして死体の前で静かに手を合わせた、死体の中には子供もちらほら見えた。

(子供もか容赦ないな)

王都の近くでこんな事件が起きているのに衛兵が誰1人来ていないのもおかしかった。

「アレシア急いだ方がいいかもしれないステラスが襲撃されている可能性がある」

「そんなバカなことが!」

「足跡からしてここ最近しかもかなりの人数がここを占領したみたいだ」

「な」

「扉が閉まったのも偶然じゃないんじゃないか」

「今すぐ王都へ行きましょう」

アレシアは立ち上がった。

「飛んで行った方が早いかもしれない」

「またなの」

「文句言うな窒息するなよ!」

また勢いよく上空に飛んで空中で闇魔法を足元に発動して板を作り出しそれを蹴って直進して飛んで行った。そしてまた悪い予感が当たった、王都ステラスが炎上していた。

「予想以上にまずい状況だ!アレシア!」

「あの旗は間違いないオリアルだわ!」

そこには赤い背景に黄金の獅子が描かれた旗がいくつも立っていた、一か所の門が完全に破壊されてそこからオリアルの軍隊が市場に大量に侵入していた。そして城の下まですでに進軍されていた。さらに移動型の簡易大砲がゼウスとアレシアを捉えていた。その他にも小さな機銃がこちらに向けられていた。

「ねぇこっちに向いてない?あの大砲」

「君を抱えていたらうまく戦えないから一旦降りるぞこのままじゃハチの巣だ」

(それにしても数が多すぎるまるでアリの大群だ、これが武装国家か)

オリアルの兵は10万近くの大群でルカンデラを侵略戦争を仕掛けていた。

アレシアは疑問に感じていた、神聖装備を装備している十騎士がいるはずなのにこんなに早く進行さるはずがないと、一週間でいくつもの拠点を攻略してなおかつステラスを城まで攻め込むなんてどういうことなのか説明がつかなかった。

そしてゼウスが門の手前に着地した、ここはもう敵が通った後だったためすごい荒らされようだった。

「中にはどれだけの兵士が入り込んでいるかわからない乱戦になるな」

「早く城に行かないと王が危ない」

アレシアは意外と冷静に対処していた、ゼウスは最初道具としか思ってなかったアレシアに愛着が湧いていたため力になりたいと思っていた。

「おい!命を無駄にするなよ」

アレシアの命を簡単に捨てそうな雰囲気が出ていたため釘を刺しておいた。

「大丈夫私は城を目指す」

「わかった城に行くか低空で飛ぶぞ」

ゼウスは周りの建物の高さを確認した、そしてステラスの市街に入ったが街は想像以上に悲惨だった。市民は刺殺され焼き払われていた、そして戦いはいまだに続いてるからかあちらこちらで悲鳴や怒号、爆発音が常に鳴っていた。アレシアの怒りは頂点に達した。

「走っていくぞ周りの雑魚は全部無視して全速力で向かう」

「お願い!この戦争を仕掛けていた奴の首を切り裂いてやる」

「行くぞ!」

アレシアの体をお姫様抱っこして屋根を伝ってひたすら走った。



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