第3話戦闘
ゼウスが廃墟で交戦をする数時間前ステラス王宮にて
ルカンデラでは最強の騎士団、十騎士と呼ばれている者たちが存在する。彼らは武術、知力、精神力などあらゆる方面から優れている者たちが選ばれている。そこらへんにいる騎士とは格が違う、そのような騎士たちをさらに強めるために神聖装備といわれ上位装備が与えられる。
過去の一流の職人たちが作り上げた魔法を使える武器と装備その魔法効果は装備によって左右されるが相性によってだいたい選ばれる。その中の一人が黒騎士 アレシアである20歳の若さで昇格した異例の天才でだった、そんな彼女は十騎士になってからまだ日が浅かった。そして十騎士は月に一度各々の戦果などを説明するべく必ず会議を開く、それが今日だったその会議にアレシアも参加していた。
十騎士の中央に巨大な四角系の机が置かれていて十騎士はその左右5人づつ分かれて座る、そして中央の奥にはルカンデラの王アダルバート王が座るのだ。
「みな忙しい中集まってくれて感謝する」
王が一通り話し終わると十騎士たちの報告が始まった。
「これより報告を開始せよ」
「は!」
十騎士全員が一斉に返事をして順番にこれまでの事件や戦果、経済情報などこれからの国の在り方について話し合った。
数時間後
会議が終わり巨大な扉が重々しく開いた、アレシアは基本王都の見回りが仕事である。大きな戦争も現在起きていないので盗賊や盗人などを見つけては捕まえて牢にぶち込む毎日を送っていた。そんなアレシアは人当たりもよくみんなから愛されていた。
そして彼女に今日初めて極秘任務が下された、アレシアが自室で日記をつけているとドアがノックされた。
「アレシア入って大丈夫か?」
王の補佐アドニスの声だった、彼は王のそばに仕えて10年以上になり王から絶大の信頼を得ていた。
「はい大丈夫ですよ」
アレシアが返事をすると扉が開き中に入ってきた。
「王から君に直々に任務がある、無法地帯にいってもらいたい」
「無法地帯ですか?なぜ」
「無法地帯にかなり大きい盗賊団がいると確定情報が入った、軍を動かすとほかの国に目をつけられるかもしれない、だから極秘に君一人で殲滅してきてほしいのだよ」
アレシアは王の力になれるチャンスだと思い喜んでこの仕事を受けることにした。
「出発は2時間後、君の神聖装備、黒鋼も着用して行ってくれ」
アドニスはそう言い残すと部屋を出て行った、アレシアは十騎士になって初めて大きな仕事が来た喜んでにやけていた。
2時間後準備ができたアレシアは、転移魔方陣の中にいた、時空をも歪める強力な魔法は魔方陣を書くことで発動できる。
「始めてください」
アレシアがそういうと魔方陣が光だし光の中に消えていった、アレシアが目を開けるとゼウスがいたつり橋のところに立っていた。
「さて、始めますか」
アレシアは全身黒い装備に身を包んでいる重装備というよりはアレシアの体にフィットしているしなやかな鎧だった。武器は背中にランスと左手に大楯をつけている。
アレシアもゼウスと同じように廃墟にたどり着き同じような道を歩いていった。
「酷い」
アレシアは転がっている死体に目を閉じて合掌をしていた、その時ドンと大きな音が響き渡った。
「何!?」
アレシアは全速力で音のなる方角に走っていった、そこには城の書物庫にいた白髪の男が立っていた。
ゼウスが片腕で持ち上げている男はとっくに気を失っていた、両目の瞳はなくなっており空洞になっていた。片腕は切断されており前身は血まみれで傷が見えないほどだった。
「やりすぎた……まさかここまでもろいとは……」
ゼウスが疑問に思っていると後ろから風を切る勢いで何者かが急接近してきた。持っていた男を放り投げ左側に体をそらして回避した、何者かが通った先には全身黒い鎧で纏われた騎士が立っていた。大きな盾と巨大なランスを構えて戦闘態勢に入っていた。
「あれは、ランスか 実物は初めて見るな」
初めて見る武器に興味津々だった、そしてどこかで見たことある男だなとアレシアは思っていたがここで思い出した。
「貴様、王都の書物庫に侵入したな?」
ゼウスは少し考えて あ! と思い出した。
「この騎士はあの時の女か!」
それに見た感じだとなかなかいい装備をしているあきらかに一般兵士ではない、あの国ではそれなりの地位にいるのかもしれないと推測した。そうなると敵対はしたくないが今思うと自分がとんでもないことをしていたと軽率な行動を反省していた。
「すまなかった」
ここは素直に謝った、明らかに自分に非があるため弁解のしようもなかった。
「謝って済む問題か?あそこは厳重に警備されていた、魔法の類も探知するはずだなのに貴様はどうやって奥まで侵入したのだ?」
どうやったもなにも普通に歩いていったのだから説明しようがない、透明になっていたのをこの時忘れていた。
「どうやっても何も普通に歩いて……いやまってくれ今思い出す!」
「時間稼ぎのつもりか?なら捕らえて連れて帰るとしよう」
「勘弁してくれ」
ようやくここまで来たのにまだ逆戻りでは困る、だから捕まる訳にはいかなかった。
そしてアレシアが全力疾走でランスの届く距離まで詰めた、その速さは普通の人間とは比べ物にならなかった。ランスと大楯をもっているの訳がわからなかった。
(早!)
少し驚いたが混乱はしていなかった、目で十分終える速さだったから。そしてゼウスがランスの届く距離に入ると槍が高速でゼウスの胸めがけて突かれたがゼウスは難なくこれ避けたが謎の衝撃がゼウスを襲って後ろに大きく吹き飛ばされた。
「これで気を失ったかな さて回収してはやく任務に戻らないと」
吹き飛ばされた場所でゼウスは呆然として寝ていた、瓦礫の中でさっき何が起ったのかわからなかった。
「あれ?かわしたよな?あれ?」
体をポキポキ鳴らしながら瓦礫から出てきたゼウスは自分がなぜ吹き飛ばされたかいまだに理解できずにいた。
「なんで動けるの!?」
元気なゼウスを見てアレシアも訳が分からなかった。
「何が起きたのかは本人から聞くか、さて反撃開始」
ゼウスの反撃が始ろうとしていた、服についた土を払って崩れた服を直した。
「試してみるかいろいろと」
するとゼウスの右腕から青白い稲妻が発生した、その稲妻はどんどん腕から指先に集まって一気にアレシアに向けて放たれた。
「なっ!?」
強力な稲妻を黒鋼の大盾で受け止めたが凄まじい轟音が周りに響きわたった、衝撃が分散され周りの廃屋に大穴があいたり、壁が燃えていたりしていた。
「なんて威力なの…」
さっきの魔法の威力に驚いていたらゼウスの姿が消えていた。
「どこに?!」
「その盾頑丈だな」
彼女の背後にゼウスが回り込んでいた。
「ちっ!」
アレシアが後ろに振り向いている暇はないと判断して前方に移動しようとしたが遅かった、ゼウスの回し蹴りが左わき腹にヒットしし廃屋を貫通しながら飛んで行った。
「やべ……大丈夫か?」
探しに向かおうとしたら集団の足音が近くまで来ていた、金属の擦れる音もするので確実に武装しているのがわかった。
「もうこれ以上の面倒はごめんだぞ」
ゼウスは透明化した後陰に隠れたと同時に盗賊風の男が20人ぐらいで走ってきた。
「ここらへんだよなさっきからすげぇー音していたのは」
「そのはずだここらの家が壊れてるしな間違いない」
「いったいなにがあったんだひでぇー壊れ方だぞ」
「しるか、それより侵入者を探せ 見つけ次第殺してもかまわん」
ゼウスはそんな会話を聞いて次の行動を考えていた、また戦闘になるのも確実だが数が多いのが面倒だった。
「さてどうする このままやり過ごしてあいつらの本拠地にでも案内してもらおうかな」
組織で行動しているということはトップがいるはず、そのトップを押さえれば穏便に事を済ませられるのではないかと思っていた。様子を観察していると盗賊の一人が声を上げた。
「おーいこっちに黒い騎士がのびてるぞー!!」
「まじかよ!!」
周りを捜索していた者たちもぞろぞろとその場所に移動を始めた、それにゼウスも便乗してついていった。
(あの女あの蹴りで気絶したのかよ……どうしよう)
再びやってしまったと悔いていた。そして男たちが彼女の鎧を剥がそうとするがびくともしなかった、鎧の隙間には剃刀1つ入るスペースもなかった。
「くそ!なかなか取れないぞこの鎧」
「おら!どけ!貸してみろ」
「なんだよこれほんとにとれないな」
「とりあえず引きずってもってかえろうぜ」
「そうするか」
黒鋼の盾とランスは重かったらしく後で取りに戻ると話をして本体であるアレシアは男4人がかりで運ばれ行く様子をゼウスは遠目から観察していた。
(このままアジトまで案内してもらおうかな)
案内してもらった後アレシアをどうするか迷っていた、戦闘してしまった以上もう友好関係を築くのは難しいかもしれない、しかし自分の過ちでこんなことになってしまった責任を取らないわけにはいかなかった。
(助け出してもう一度きちんと謝ろう、その前にあいつらのトップと話し合いに行くか)
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