第2話アレシア ルーン
「朝か」
ある少女がベッドから起き上がった、長い髪を揺らしながら寝間着から黒い鎧を装着して部屋を後にした。
彼女の名はアレシア 、アレシア・ルーン。彼女はこの国、ルカンデラでも有名な騎士だった。農民出身で盗賊や敵国などこの国の平和を乱すものなら容赦ないことで有名だった。そして宗教などの神の存在を絶対に肯定しないことでも有名でもあった、彼女の幼少期になにかあったらしいが詳しくは話したことはない。そんな彼女は書物庫に向かって歩いていた、昨日の報告書をまとめた書物をしまいに来たのだ。
(だれか来たのかな)
本の場所がずれていたり移動していたのが気になったが、誰か来たのだろうと思いそこまで気にしなかった。
そしてこの書物庫にはもう一人違う男が潜んでいた、体だけ透明だから服が浮いてるようになっていた。
(なんで隠れた!私は!いやどうする)
とっさに隠れてしまったがなぜ自分が隠れたのかわからなかった。前に騎士に警戒されたからなのだが焦って思考が混乱していた。
(とりあえず服があるから透明化はやめよう)
この書物庫はかなり広く梯子なども設置されるほどの大きさで本棚も大量にあったたため隠れる分には困らなかった。
(誰よこんなに散らかしたのは)
アレシアは地面に散らかった本を片付けるのに夢中になっていた。
(いまならいける!)
忍び足で扉まで歩いてたら偶然そこでアレシアと目があってしまった、というか見つかった。
「誰だ!」
アレシアが声をあげると彼は目にも止まらぬ速さで部屋を後にした。
「な、消えた!?」
アレシアは急いで周りを目を凝らして見てみたがさっきの男がいるはずもなかった。
「どこに!」
そのころかれは自分の体から出たスピードが信じられなかった。
(なんだ今の?!それより逃げ切れてよかったいきなりきて驚いたな)
それにしても怖そうな女だったと口には出さずに城の外にでるべくまた城内を歩き始めた。
(まず人間として生きていくことにしたが名前が必要だな)
考えながらしばらく歩き回った。
(どうするかな)
しばらく考えているが思いつかないそしてふと名前を思いついた。
(ゼウスでいいか)
うんうんとうなずきながらここにゼウスで決定した。そして無事城内からでて町はずれの森まで来て頭の中に入っている情報をゼウスは整理し始めた。
(まずここは王国ルカンデラ、そしてここは最大の都市ステラスか)
地面に地図を描き情報を形にして至った。
(ここのさらに北に行くと巨大な武装国家と呼ばれるオリアルという国があって、好戦的で魔法より科学が進歩している国か……東は海であり西はカリウスという国でオリアルと違い平和主義で有名ね、南は巨大な崖に阻まれていて情報が少ない
しかし平和なのは国であってどこの国にも属していない土地が無法地帯と呼ばれているのか)
無法地帯は軍隊もない弱い人間を守ってくれるものは何もないのだ、どこの国も見て見ぬふりをしているのが現状で、解決策がないのも事実だった。
(さて、まずは無法地帯に行ってみるとするか)
ゼウスは頭の中にある方角に従って歩き出した、世界を変える旅の始まりだった。
アレシアは考え込んでいた、どうやって城に侵入してここまで来たのか謎だった。
「誰かいたはず……少し調べるか」
書物庫をくまなく見て回った、ここにいた男がどんな本を読んでいたのかなどを調べた。
「ほとんどが歴史……この国の重要な案件は見てないみたい」
必ず見つけてやると決意を固めてアレシアは書物庫を後にした。
無法地帯に向かい歩き出して半月近く時が過ぎた、その間にまたいろいろな事を学んだ。まず金貨の運用についても詳しく分かった、紙幣はその国によってまだ大きく上下しているらしく外交もあまり行われていないらしい。
どの国も仲がいいわけではなく沈黙の睨み合い、無法地帯もかなり広いらしいが大きさは適当に記されているので当てにならないものだった。
(意外といい加減だな)
余ってる土地があるのだから領土拡大を目論んでもおかしくはないはずなのだがどこの国も動きがない周りの様子をうかがってるのかもしくは無法地帯になにかあるのどちらかではないかと考えていた。
(ここか)
こんな考えをしていたら目標の場所に着いた、周りの景色にそこまで変わりはないがこの橋の向こう側に行けば無法地帯になる。橋の下には川が流れているがかなりの高さで並の人間なら即死だろう、一様橋をしっかり確認しながら20m近く長い橋を渡ったが特に罠らしいものもなかった。
またしばらく進んで森を抜けたら廃墟のような都市を見つけた、廃墟のようなというより完璧な廃墟だった。家の作りはステラスの者と非常によく似ている廃墟の周りには鉄柵がはってあったがびっくりするぐらい適当だった。
(これ機能して……いるわけもないか)
入り口を探してもよかったが隙間が開いていたのでそこから入ることにした、この廃墟も中に入るとまた酷い匂いだ。周りには動物の死骸や人間の死体もちらほら転がってた、ほとんどが腐敗してハエが群がっていてウジ虫が溢れかえっていた。
(死んだらこんなことになるのか……うぅ)
あまりの惨さに目を背けた、こんなになるまで放置しているところを見ると誰もいないのかもしれない。
「廃墟になる前はきっと綺麗だったんだろうな」
これだけ巨大な都市なのに終わりを見ると悲しくなってしまった、少し歩いていると話し声が聞こえてきた。急いで周りを確認するため屋根に上り見渡してみると斧を持った上半身裸の男が二人、周囲を警戒するかのような動きで道を歩いていた。
「ちょうどいいから話でもするか」
屋根から飛んで男どもの目の前に飛び降りた、びくりと体を震わした男二人が背中の斧に手をまわして口を開いた。
「誰だ貴様!」
ゼウスが落ち着くようにしゃべりかけるが聞く耳を持っていなかった、知らない男が飛んで来たら誰でもこうなる。
「驚かせてすまない、落ち着いて少し話がしたいんだけど」
なだめるように話しかけるが無駄なことだった、2人はどんどん興奮していきいつ襲ってきてもおかしくなかった。
「話なんてすることねぇ!殺すぞ」
「なぁここが何なのかを教えてほしいだけだ」
「はぁ?ここはキルス様の国だっつのてめぇ外から来たんだなどこのものかしらねぇが半殺しにして連れて行く!」
「キルス?」
ゼウスがキルスとは何なのか考えている間に2人は襲い掛かった、人を引き裂くほどの巨大な斧を振り上げて走ってくる。
「キルス、キルス……まぁまずは始末するか、どうせ碌な輩じゃないだろうしな」
ゼウスが走り出すと瞬間驚異的な脚力で男との距離を詰める。
「な!」
男の一人が驚いて後ろにのけ反って大きく体勢を崩した。
「行くぞ」
ゼウスの手のひらがのけぞった男の前に出され、そのまま魔法を発動させた。ドンっと大きな音がすると同時に男の関節がおかしな方向にむいて大きく吹き飛んだ。
「え」
もう一人の男はあっけらかんとしていた、目の前で何が起こったのか理解できなかった。
「こんなものか」
ゼウスは手のひらを回して魔法の具合を確認した、旅の途中で何度か練習したがルカンデラは平和で盗賊の類とも出会わなかったため実戦で使ったのはこれが初めてだった。
「さてと」
もう一人の男にはゼウスはここはどこなのかを暴力で聞き出すことにした。
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