30話 : 踊り子、なのですよ。
白い髪に燃えるような瞳。白い肌を引き立たせる綺麗な朱色のヒラヒラした服。
アッサム「踊り子、さん?」
??「んふふ。はい、サブ職業に踊り子を選択した冒険者なのです」
シュガー「……冒険者、か。何か知ってるふうだな」
シュガーはローブの下から眼を光らせる。それに怯むことなく、彼女は微笑んだ。
??「んふふ。そうですね…少しなら、知っているのですよ。例えば、この里にはかぐや姫の伝説がある、とか。君が噂のアッサムくんだ、とか」
フェイスベールの下の口元が上を向く。
この人は自己紹介もしていないのに、確実に僕を見て「アッサム」だと言った。
それに反応してコジーとシュガーが僕のに立ち、戦闘態勢に入る。
??「こらこら。村や里の中は戦闘禁止区域なのですよ? ……とりあえず、場所を変えてお話ししないですか?」
里の中心から少し外れた小屋の前。そこで僕らは改めて話を進めた。
コジー「そういやさ、ねーちゃんの名前なに?」
??「あら、ごめんなさいなのですよ」
踊り子のお姉さんは片手を胸に当て、片足を後ろへと下げた。軽く頭を下げ、彼女は言った。
ミルク「名前はミルク。
ミルクと名乗った彼女は、僕らには分からない言葉で何か呟いた。それに反応して、彼女の周りの風がざわめきだす。
瞬きをした一瞬に、彼女の肩のあたりに何かが飛んでいた。
アッサム「……なっ!? …な、なに、それ…?」
ミルク「んふふ。可愛いでしょ? キューちゃんっていうのですよー」
キューちゃん「キュー!」
呼ばれた名前に答えるように、その小さな羽根をばたつかせる。その見た目はおとぎ話で聞かされるドラゴンのそれだった。
キューちゃんと呼ばれる手乗りサイズのドラゴンは、僕の周りを何周か飛んだ後、僕の頭に座り込んだ。
ミルク「…やっぱり。みんな、アッサムのこと覚えているのですよ。……いいえ。正確にはルイボス様のことを…」
コジー「ルイボスって………そういや、モリリンが言ってたな。なんか泣いてたよな…?」
ミルクは「はい」とコジーに返事をした。
ミルク「ルイボス様は村人でありながら、世界に選ばれたお方なのですよ! ミルクは冒険者ですが、この子達からたくさんの話を聞いているのですよ」
シュガー「他には何を聞いているんだ?」
まだ信用ならないとでも言いたそうな表情のシュガーは口を開いた。
そんなことなど特に気にしないのか、変わらない態度でミルクは返す。
ミルク「そうですねー。この里に来ているってことは、既に2つの玉を手に入れたのですよね? つまり、想像上の存在の加護を2つは受けているのですよ」
コジー「カゴ?」
彼女はフェイスベールの下で微笑んだ。そして、そのふくよかな胸の下で腕を組む。
コジーが目を逸らしたのが視界の端に映った。
ミルク「赤ずきんと青鬼の加護……【声】と【記憶】なのですよ。【詠唱時間】と【記憶】なのですよー」
シュガー「……すまないが、もっと具体的に言ってくれ。そこで何も分かってないやつがいる」
アッサム「……あはは」
ミルクは驚いたようで、少し反応が遅れる。
ミルク「まだ、何も聞いていないのですね? 分かりましたのですよ。ミルクにお任せください! …ではまず、詠唱時間から。その名の通り、詠唱時間に関係しているのですよ。付与された加護は【詠唱時間の短縮】なのですよー。狩人のアッサムには関係のない加護なのですが、魔導師達には大助かりな加護なのですよ!」
退屈になったのか、キューちゃんはうたた寝を始めてしまい、頭から転がり落ちて来た。上手く手のひらにキャッチ出来たけど、既に気持ちよさそうに眠っていた。
ミルク「記憶は……そうですね。技を覚えやすくなった、といったところなのですかね? ミルクにもよく分かっていないのですよ。……ただ、アッサムで言えば、ルイボス様の記憶が思い出せるのですよ。そんな経験はないのですか?」
さっき、親父が出てきたあれはルイボスって人の記憶ってこと…? でも、何で僕が……?
ミルク「んふふ。何で、って顔してるのですよ。……何でって、アッサムがルイボス様の生まれ変わりだからなのですよ?」
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