26話 : ちょっと惜しいんだよ。
僕らは少年に続いて庭の奥へと入った。
月がまた雲に隠れ、少年の背中に影を落とす。
アッサム「……ねぇ、どこまで行くの??」
不安になった僕は少年に尋ねた。膨らんだ胸の不安を撫でるように、竹やぶがザワザワと風に揺れる。
??「もう少し、だよ」
振り返らず そう言った少年の声色は、どこか弾んでいるように思える。そして少年はようやく立ち止まった。曲がった回数からして、入口から真反対の位置にいる。
??「着いたよ。あそこにいるのが僕の大好きなお姉さんだよ。……お兄ちゃん達、お姉さんを助けてくれない?」
少年が顔を向けた先に目を向ける。「エンガワ」と呼ばれる所に座る、一人の女性の姿があった。
タイミングを見計らったかのように月が顔をのぞかせた。それに照らされ、その姿が闇夜に浮かび上がる。「キモノ」と呼ばれるものに身を包んだその人は、物悲しそうに空を見上げていた。
??「お姉さん! ただいま!」
少年のかけた声に反応し、彼女はこちらを向いた。驚いた表情を見せると、慌ててその顔を隠す。
かぐや姫「レオン、その方達はどうしたのですか? わ、わたくしは、お会いできません」
レオン「大丈夫だよ、お姉さん! このお兄ちゃん達はね、冒険者って言ってね、旅をしている人達なんだ! だからそんなに怯えなくても大丈夫だよ」
少年は彼女に急いで近づき、彼女の顔を覗く。少年の「大丈夫」という言葉に誘われて、隠していた手を退ける。透けているはずの彼女の姿は、光り輝いているように美しかった。
かぐや姫「……ほ、本当?」
その顔から怯えた表情は消えず、目線で僕らに訴えかけてきた。
アッサム「ほ、本当だよ! 僕は全ての“想像上の存在”を助けたい。……あなたも、困ってるんだよね?」
シュガー「怪しく映るかもしれないが、私達は既に赤ずきんと青鬼を助けてきた。これが証明だ」
そう言うとシュガーは一つのビー玉を取り出した。
アッサム「それって……」
僕も急いでポケットから同じものを取り出す。
シュガー「あ、あぁ。あの小屋で起きた時、お前の側に転がっていたから、失くす前にと私が預かっていた。言うのが遅れてすまない」
シュガーは手のひらにビー玉を乗せ、腕を高々と掲げている。その真面目な姿になんと声をかけていいか分からなくなった。
アッサム「いや、その…それは良いんだけど……えっと…」
コジー「ちょっと惜しいんだよ。方向は合ったんだけどな、もうちょい下だ」
そういえばシュガーには見えていなかったのだと改めて思い出す。座っている彼女は、状況が掴めずポカンとした表情を浮かべていた。
シュガーが顔を真っ赤にして怒りだした頃、かぐや姫は何かの糸が切れたかのようにクスクスと笑いました。
かぐや姫「わたくしのことを見てもその反応……つまり、本当に冒険者様なのですね。レオンのことを疑っていたわけではありませんが、脅されたりしていたのではと、少し心配だったのです。失礼な態度をお許しください」
微笑んだかぐや姫の姿は、この世のものとは思えないほど美しく感じました。
レオン「…そうだ! 早速、聞いて貰ったら? 何を取られたのかを。お姉さんの大切な心の一部の話を」
レオンは僕に目を向けた。その目は何かを訴えているようで、しばらく晒すことが出来なかった。
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【アッサム ー村人ー】13歳(♂)
【シュガー ー冒険者ー】27歳(♀)
【コジー ー守護者ー】30歳(♂)
【レオン ー??ー】13歳くらい(♂)
【かぐや姫 ー想像上の存在ー】15歳くらい(♀)
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