夢に溺れる里 アクアマリン
25話 : 光る竹を追いかけて。
僕らは村を出てしばらく歩いていた。崖の上から見た景色では近くに感じた竹やぶまではそれなりに距離があったようで、まだ着いてはいなかった。
ようやく竹やぶの入り口に差し掛かる頃、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。
シンリン「おーーい! 3人ともーー!!」
振り返るとヘロヘロになったシンリンがいた。ここまで走ってきたのだろうか。息が上がっている。
……幽霊でも息が上がるんだ。と考えていた僕の方を彼は見てきた。ドキッとしてしまう。
シンリン「これ、忘れ物だよい」
そう言って手渡されたのは宝石だった。僕はシンリンの顔に再び視線を向ける。
シンリン「それは絶対、いつか君らを助けてくれるよい。だから、1つは持っておくといいよい」
僕はそれを大事に仕舞った。「それじゃあ」とシンリンに別れを告げ、竹やぶの中へと足を踏み入れた。
だが、歩いても歩いてもどこにもたどり着かない。もう日が傾いて、空が紺色に染まり始めている。
少し休憩しようと、僕らは木の下に腰を下ろした。紺色の空には、ちらほら星が光っている。
コジー「……結局、夜になっちまったなぁ」
シュガー「ここまで次の村が遠いとは……まぁ、少しずつレベルが上がるのは嬉しいが」
空を見上げたシュガーにつられ、僕も空に顔を向けた。雲に隠れていた月が顔を出す。
コジー「おい、あれ!!」
コジーのあげた声に驚いて、慌ててそちらを向く。コジーの指差す方には光る竹があった。
シュガー「……行ってみよう」
腰を上げたシュガーに続き、僕らも光る竹を目指して歩いた。
光る竹に近づくと、その竹の光は消え、奥の竹が光り出す。その繰り返しだった。
少しすると奥に建物が見えてきた。僕は見たことのない家だったけど、シュガーは「ヘイアンジダイ」のものに似ていると言っていた。
コジー「…まぁ、光る竹に大きな屋敷……ってなると、竹取物語しかねーよなー」
アッサム「たけとり…??」
シュガー「山で竹を刈っていた翁が、光る竹の中から小さな女の子を出てくるんだ。その子を家に連れて帰り、嫗と育てることになる。
だが、その子は普通の子より成長が早く、あっという間に美しい娘になるんだ。その美しさを聞きつけた貴族が言い寄ってきたが、彼女は無理難題を言い、それらを追い払う。しかし、とうとう帝までもがやってきてしまい、結婚することになる。
……だが、彼女は月の住人だった。次の満月の夜、月から迎えが来ると知った帝は、大勢の兵を集め待っていたが、天女達の姿を見た途端、眠りについてしまう。かぐや姫の呼ばれた彼女は翁と嫗に不死の粉を残し、月へと帰ってしまう。……という話だ」
??「あれ?? お兄さん達はだぁれ??」
屋敷の庭の方から一人の少年が顔を出した。…少年、と言っても僕と同い年くらいの子で、人形のように整った顔をしている。
アッサム「君がかぐや姫?……じゃ、ないよね。男の子だもん」
??「君はお姉さんの友達かい?? お姉さんならこっちだよ!」
嬉しそうにそう残すと、奥へと消えていった。僕らは顔を見合わせると奥へと足を向かわせた。
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【アッサム ー村人ー】13歳(♂)
【シュガー ー冒険者ー】27歳(♀)
【コジー ー守護者ー】30歳(♂)
【?? ー??ー】13歳くらい(♂)
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