21話 : 本当に?
アッサム「キャタピラーの、針?」
あぁ。と言いながら、シュガーは針を指で摘み動かしている。
シュガー「どうやら、さっきの毛虫型の魔物を倒すと稀に手に入るようだ」
コジー「毛虫にしては結構デカかったけどな。最初、猪かと思ったぜ」
確かに、コジーのいう通り毛虫にしては大きかった。巨大毛虫、という表現が一番しっくりくる。
シュガーは、その針をポケットにしまった。
シュガー「これをもう少し集めて帰るか。順調にレベルも上がっているしな」
僕はその言葉に促され、シュガーの頭の上を見る。2levだった数字は4levとなっていた。コジーの頭の上にも4levと浮かんでいる。
あの音がレベルに関係しているのかと思うのは、僕のではない記憶に関係してあるのだろうか。
コジー「……」
このあと僕らは1時間程かけて目標の10Levにした。この頃には「キャタピラーの針」も7本になっていた。
これ以外にもいくつかのドロップアイテムを手に入れ、全てリリナの所へと持っていくことにした。
コジー「ほい、犬っころ。色々と取ってきてやったぞー」
リリナ「わぁ〜い、ありがとう! …って、リリナは犬っころじゃないの!! リリナはリリナなの!!」
リリナは怒りながらもコジーから手渡された袋の中を覗く。
リリナ「わぁ〜〜っ!!! キャタピラーの針に樹液……これ、各属性の? こんなに?」
アッサム「こんなに、って言っても各20個程度だけどね」
敵が落としたのは石だった。それも、シンリンが教えてくれた属性の付いた。コジーが倒せば土属性が付き、シュガーが倒せば雷属性が付いた。
偶に2人が倒しても草属性が付いてたけど、それを見て彼らは「なるほど」と言っていた。きっと、また僕には分からないことに気がついたんだ。
リリナ「これだけあれば、今足りない分くらいは余裕で作れるよ! なに作る?」
リリナは尻尾を大きく振って僕らを見た。リリナの言葉に、ぼーっとしていた僕は我に帰る。リリナの喜ぶ姿におされ、僕らは順番に欲しいものをあげた。
リリナ「雷が鎧だけ。土が剣と盾とレギンス。木は要らなくて、キャタピラーの針でアイテムを。……で、合ってる?」
僕らの要望を復唱したリリナは、僕らの顔を見回した。それに頷き返す。
リリナ「アッサム、本当にいいの? 鎧って言っても、アッサムが着けてるのはチェストプレートだけでしょ? 鎧は他にもヘルメットもレギンスもブーツもあるんだよ??」
アッサム「うん。今の僕にはこれだけで十分だよ。ただでさえ戦闘なれしてないのに、これ以上身体重くなったら余計動けないから。それに武器も村長にもらった弓矢があるし。大丈夫だよ。余った素材はリリナが好きに使ってよ」
リリナ「……うん。ありがとう、アッサム!それじゃ、早速作ってくるね!!」
リリナは元気に尻尾を振ると、家の中へと消えていった。これが出来れば、いよいよ あいつとの再戦だ。
僕は背中に回していた弓矢を手に取り、胸の前で握りしめた。僕の中の何かが「大丈夫だ」と言っているような気がする。
僕の背中を押すように追い風が吹き、木が騒めいた。その中の会話は小さすぎてアッサムの耳には届かなかった。
木「あの人は、今度こそ……」
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