13話 : 取り敢えず、祠まで案内してくれよ。モリリンくん。



シュガー「誰だっ!!」



??「ひっ…け、決して怪しい者ではないんですよい! ただ、森が騒めき出したんで、もしやと思ったんですよい」



シュガー「……私は誰だと聞いたんだが」



シンリン「自分は木こりのシンリンってんですよい。この先の祠の番をしている者ですよい」



そう言ってシンリンは自分の後ろを指差した。



コジー「え、近くないか!? それともいつの間にかそんなに歩いて…」



シンリン「キッキッキッ。あなた方が選ばれた勇者様たちだからですよい。選ばれた勇者は、あの廃村より先に、近いここへ導かれるんですよい。だから祠から廃村までは少し遠いんですよい」




僕は辺りを見渡した。


あんまり気にしていなかったけど、森が何か言ってるみたい。分かんないけど……でも、祠はきっとあっちだ。


僕はシンリンが出てきた方とは逆の方向に顔を向けた。




シンリン「……そこのおチビさんは木属性の方ですかい? その見た目、てっきり村人かと思ったよい。だからあなた方は人さらいなのかと…」



コジー「失礼なっ!! さっき、お前は俺らのこと選ばれた勇者だって言ってたじゃねーか!」



シンリン「だから、ですよい。今までの中にそういう輩がいたんだよい。村人をさらって、貴族たちに奴隷として売りつける…選ばれたのだから何でもしていいと思ったんだろうよい」



シュガー「それはすまなかった。そいつらに変わって私が謝罪する。これで済むとは思っていないが…」



アッサム「それに、僕は村人だよ。…まぁ、正式には “だった” の方が合ってるかな? 今は選ばれた勇者として旅の途中なんだ!」




シンリンは目を見開いた。そして目を潤ませ下を向く。




シンリン「……そ、そんな事があるんだよい…。ルイボス様だけじゃ、なかったんだよい…」



アッサム「あ、あの……?」



シンリン「それならっ! 2人の会話、あんまり分かんないんじゃないかい? 自分の方が知識はあるよい! 出来る限り教えてやるよい!」




シンリンは僕の手を笑顔で握ってくれた。


さっきの涙は…? それにルイボスって……。


僕が聞くかどうか悩んでいると、しばらく黙っていたコジーが口を開いた。




コジー「取り敢えず、祠まで案内してくれよ。モリリンくん」



アッサム/シュガー「……は?」



コジー「ん? だって森林だろ? モリリンじゃんかよ。な! モリリン!」



シンリン「キッキッキッ。何でもいいよい。それじゃあ、自分の後を着いてくるよい」




そういうと、シンリンは森が教えてくれた方へと進んでいった。










シンリン「…ここだよい」




シンリンが立ち止まったのは、祠から少し離れた場所だった。




コジー「おいおい、何で近くまで行かないんだ?」



シュガー「しっ。静かにしろ」



??「う、うぅ……うっ…ぐすっ……恨めしい、人間が……憎い……うぅ…」




何かが泣いている声が聞こえてくる。




コジー「これは……!?」



シンリン「……想像上の存在、だよい」



シュガー「何故泣いている?」



シンリン「分からないんだよい。自分には話してくれないんだよい。あいつに話を聞いた勇者も、自分に教えてくれなかったんだよい」



??「うっ……くすっ……うぅ…」




シンリンが話している間も、泣き声は聞こえてくる。




アッサム「……っ、僕! …ちょっと、行ってくる!」




僕はそのまま祠の方へと走って向かった。




アッサム「ねぇ! どこにいるの? 何で、泣いてるの?」



??「来るなっ! 人間め!」



アッサム「僕でよければ力になりたい。君を助けたいんだ! 君の失ったものは何?」



??「……失った、もの…。僕は、たくさん、たくさん失った。…っ、お前たち人間に奪われた! 家族も! 家も! 友達も! 全部全部、人間に奪われたっ!!」




祠の後ろから声の主は現れた。泣き腫らした眼を光らせて、殺意のこもった視線を向けてくる。




??「僕らは、何もしてないのに……僕らは…ただ、この見た目だからって……人間とは違うからって…怖がられて…」



アッサム「…」



鬼「僕らがっ……僕ら鬼が一体何をしたっていうんだよ!!」






-*-*-*-


【アッサム ー村人ー】13歳(♂)


【シュガー ー冒険者ー】27歳(♀)


【コジー ー守護者ー】30歳(♂)


【シンリン ー木こりー】26歳(♂)


【青鬼 ー想像上の存在ー】10歳くらい(♂)

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