9話 : こ、これが戦闘……?


僕の回答に満足したらしい村長は、あるお願いと先へ進む道を教えてくれた。




先へ……と言っても、きっとそこにはウルの声を奪った魔物がいるはずだ。


そいつを倒さない限り、本当の先へは進めない。




そして村長からのお願いとは、白雪姫様という人と会うことだった。



「会って、幸せかどうか確かめてきてほしい」と。



村長がそんなに心配するほどの人だ、きっと素敵な人なんだろう。



僕は名前に聞き覚えはなかったが、コジーとシュガーは知っているらしく、少し驚いていた。




コジー「……なぁ、今更なんだけど、本当にこっちで合ってんだよな?」




しばらく歩いても一向に敵が出てくる気配のない道に心配してきたのだろう、今まで意気揚々と歩いていたコジーが後ろを振り返ってきた。




アッサム「うん、そのはずなんだけど……」




この道は真っ直ぐ1本道だから、間違えようがない。


少し狭いし間違うこともないからとコジー、僕、シュガーの順で縦に並んで歩いている。


僕はシュガーに話しかけた。




アッサム「村長、他に何も言ってなかったよね?」



シュガー「…」



アッサム「??」




黙りのシュガーを疑問に思い、僕は振り返った。




アッサム「……っ!?!?」




そこには尻尾と獣耳を生やしたシュガーがいた。


シュガー?は僕の顔を見るとニコッと笑い言った。




シュガー?「どうかしたのかい?」




その笑顔に、僕は悪寒を感じた。


……シュガーはこんな風に笑わない。


僕は先を歩くコジーを呼ぶ。




アッサム「コ、コジー! シュガーがっ!!」




コジーが「あぁ〜?」と言いながら振り返ったのを背後で感じた。


そして、コジーは吹き出した。




コジー「っぶはははは!!! お前、どうしたよ! っくく、無理無理。堪えられねぇ……くくっ。ひぃ〜、ちょ、おっさんの腹筋壊す気か!」



シュガー?「コジー、どうかしたのか?」



コジー「!?!?」




コジーも、シュガー?から向けられた笑顔に違和感を感じたらしい。笑顔を向けられた瞬間、後ろに飛び退き盾を構えた。


待って待って!! 僕、どうすればいいの!?


僕は取り敢えず弓を構えた。だが、この距離だ。外すような距離ではないが、避けられない距離でもない。


僕がこのまま矢を放ったとして、横には動けないからシュガー?は上に逃げる。そしてそこをコジーが攻撃……なんだろうけど、こんな僕にも考えられる作戦なんて…きっと相手は引っかからない。ただのバカでない限り。


それでもやらないよりは…と、僕は矢を放つ。




シュガー?「ふっ…」




想像通りシュガー?は上へと飛び上がった。僕に ああ言ったくせに何も考えていなかったのか、後ろからコジーの間抜けな声が聞こえる。




コジー「お? 何か上に飛んでる……これは絶好の攻撃チャンス!? うぉぉおおおお!!!!」



シュガー?「っ!?!?」




後ろから雄叫びが聞こえたと思うと、シュガー?は僕の背を軽々と超えたジャンプをしたコジーによって、いとも簡単に切られた。それは何ともあっさりとしたものだった。


……え、本当に馬鹿なの!?


僕は驚いてコジーを見る。コジーは当たり前という顔で剣を鞘に収めていた。




コジー「こいつ、意外とレアなのか? ドロップアイテムが結構良いんだけど。……何だこれ。“ウェアウルフの声”って…?」



アッサム「…」



コジー「ん? おい、どうした?」




立ち尽くして動かない僕を不思議に思ったらしいコジーは、僕の方を向いている。僕は足の力が抜け、その場に座り込んでしまった。


コジーの跳躍力にも驚いたが、それ以上に敵がバカだったこと。そして初めての戦闘が こんな形で終わってしまったこと全てに驚いた。




コジー「おい、大丈夫か??」



アッサム「あ、あぁ、うん。まぁ、一応?」



コジー「それよりさぁ〜、このアイテムって何だろうな?」




そうコジーが投げてきたのは銀色をした小さな箱。それを手に取ると箱の上に何やら文字が出てきた。



『ウェアウルフの声』



僕は “声” という単語が引っかかった。




アッサム「…ねぇ、この “声” ってもしかして…?」



コジー「…………あっ!!! あの犬っころ!!」



アッサム「たぶん…。取り敢えず、祠まで戻ろう。戻りながらシュガーも探さなきゃ」



意見を一致させた僕たちは、来た道を戻ることにした。

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