8話 : 薄い本の中身。


アッサム「やぁ、ただいま。行ってこいって言われちゃった」



コジー「そっか……ん? アッサム、その本って……!?」




コジーは早速、僕の抱えていた本に気がついた。




アッサム「うん! 親父が持ってた! これ探しに奥に入ってたみたい。これ読んだら村長の所へ行こうか」




コジーが頷いたのを確認すると僕は本を開いた。












『この世界には12の村や町がある。




その各町村に必ず祠か社が存在する。






ただ、そこへはぬしだけでは辿り着けぬだろう。




主の信じるものを、信じる形とし、永遠なる幸せを願う者として歩むのだ。






そうすれば、主の信じる者は必ず主を そこへと導いてくれるだろう。






だが、この12の村や町は、不思議な配置になっている。




はじまりの村とおわりの町は、1番近くて1番遠い。




だが、どの村や町にも等しく魔物は現れる。




主はこれを何と考える?




謎の真相を知り、それを各町村へと伝えよ。




そしてそれを真実とするなら、それを現実へと導け。




それすなわち、相対するものの仲をとり、永遠なる幸せを願うこと。






有限なる時間の中で、無限なる発想を元に、有限なる答えを導き出し、この世界を救い給え』

















コジー「……またまた謎だらけだな」



アッサム「うん。最初の方……えと……ここ。“この世界には12の村や町がある” ってところ。ここは村長が言ってた」




他の疑問点も2人で少し考えたけど、やはり何も分かることはなかった。




アッサム「……村長の所に行こうか。親父が “あとは村長にでも聞いてくれ” って言ってたから」




こうして僕たちは村長の所へ行くことにした。














村長「ふむふむ。ダニエルはそこまで言ったのか。ここから先は儂の出番だな。……と言っても、儂も大して知っているわけでもないがの」




そう言うと村長は祠の前に座った。村長の両隣には赤ずきんとウルが立っている。




村長「もう、ウルが何者かは分かっておるな?」




村長はウルを撫でながら僕たちに聞く。




アッサム「うん。赤ずきんの友達でしょ? 狩人に殺されたっていう………って、さっき赤ずきんが話してたじゃん。あの時、隣に村長いたよね?」



村長「ほほほ。儂がいつ、そやつらを見えると言ったかの?」



アッサム/コジー「えっ??」




あの場にいなかったコジーでさえ、驚きの声が漏れた。それほど、目の前の光景は驚くものだった。赤ずきんが村長の肩に手を置き、村長はそこに手を重ねて顔を見合わせている………ように見える。



だが、実際は重なってなどいない。いや、僕たちも彼女に触れるかは知らないが、それでも彼女と目が会うことはある。だがよく見れば村長は彼女の方を向いてはいるものの、彼女と目が合っているようではなかった。



村長の目には、彼女は映っていない………それだけは伝わった。



じゃあ、何で赤ずきんと手を重ねてるの?




村長「ほほほ。見えないのに何故……という顔をしとるな。儂は選ばれた勇者などではない……だが、感じることはできる。そんな人間だ」



コジー「第6感……みたいな感じか?」



村長「まぁ、そんなところだな」




そんなことを話していると、後ろからガサガサと音が聞こえた。振り返るとそこには先に出たはずのシュガーがいた。




コジー「何でお前ここに……?」



シュガー「………道が、分からなかった。私は自分で記憶力が良いと言えるが、ここまでの道が分からなかった……正確には道を見つけることが出来なかったんだ。だから道の途中に隠れて、お前たちの後をつけた」



村長「ほほほ、当たり前だ。この場所は選ばれた勇者だけが導かれる場所。選ばれた勇者なしにここへは来られんよ。それより、ほれ。アッサムにこれを与えよう」




そう言って差し出されたのは弓矢。そう言えば、家から僕の弓矢を持ってくるのを忘れていた。




アッサム「あ、ありがとう?」



村長「儂が使っていた弓矢だ。お古と言えば聞こえは悪いが……まぁ、我慢してくれ。お前さんも狩人になるのだろう?」




僕は受け取りながら答えた。




アッサム「うん………他に取り柄なんてないからね」



村長「取り柄、か………お前はどんな狩人を目指す?」



アッサム「……どんな??」



村長「そう。狩人と言っても色々おる。狩りだけに心を向け、人は傷つけない者。狩りの対象を人に向け、人を傷つける者。自分の行いを正すために狩りを行う者。狩りをする者には色々と思い考えるものが違うのだ。……まぁ、狩人だけに言えたことではないがな。だからこそ、お前さんはどう考え、どう思って行動するのか?」




村長の言葉を僕は考える。僕はどうして狩人を選んだのか? どうして旅をしようと思ったのか? どうして僕は狩りをするのか?



僕が狩人をを選んだのは、親父の店の手伝いで狩りが上手くなったからだ。



僕が旅をしようと思ったのは、赤ずきんを……想像上の存在たちを助けたいと思ったから。でも、今はそれだけじゃない。魔物の王………母さんも助けたい。本当に魔物の王になっているのかは分からないけど、でも少しでもその可能性があるなら助けたい。なんとしても。




アッサム「助けたい人たちがいるから。その人たちのために、僕はこの村を出るんだ」




僕の言葉に、村長は満足そうな顔をした。

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