6話 : 分厚い本の中身。
『世界には“想像上の存在”と、“実在する存在”に分かれている。
想像上の存在は祠を護り、人を護っている。
だが、その姿は本来、我々“実在する存在”には目視できるものではない。
だが、魔物の封印が解けた時、実現する存在の中に、想像上の存在を目視できるものが現れる。
それは6人の選ばれた勇者達。
それは ただの勇者とは違う、選ばれた者達。
“選ばれた勇者” となった者は、魔物を封印しなければならない。
魔物が出てきたということは、想像上の存在の 『大切な何か』 が奪われたということだから。
“選ばれた勇者” はその 『大切な何か』 を取り戻せ。
全ての想像上の存在を助けられることが出来たなら、道は必ず開かれるだろう。
……さて、ここで魔物について少し。
これを手にしている “選ばれた勇者” よ。
魔物を何と考える?
どの時代にも現れ、悪さをし、人から嫌われるもの。
それを何と呼ぶ?
我らが魔物と呼ぶもの……
それは、人間のところでいう
『✖️✖️』
が具現化したものである。
人間がそれに気がつかない限り、魔物は何度でも蘇る。
人間がそれを治さない限り、魔物は何度でも蘇る。
もし、それをこの世からなくすことが出来たなら、それは人間が人間でなくなった証拠。
だが、人間がそれを繰り返すたび、魔物は何度でも蘇り、人間を襲うだろう。
それは人間自身が魔物を生み出しているにすぎない。
“選ばれた勇者” はそれを退治するのだ。
“選ばれた勇者” は誰でもない、選ばれた者だけに与えられるもの。
村人、貴族、冒険者、奴隷………そんな身分や
この世から選ばれたものが、“選ばれた勇者” なのだから。
そして、本当の意味でこの世を救ったものこそ、真の救世主となるだろう』
コジー「……真の救世主??」
アッサム「“真の” ってことは、今までの救世主は本物じゃなかったってこと?」
本を読み終えると、次々と疑問が浮かんでくる。
シュガー「その表現は正しくないだろうな。本物でなかったのではない。今までの救世主は何十年、何百年、何千年、何万年後に必ず魔物が復活する助け方だったということ。つまり、真の救世主とは、今後一生 魔物が復活しない助け方をした者ということだろう」
アッサム「なるほどね……でも、肝心の助け方も乗ってなければ、原因さえ乗ってないね」
コジー「まぁ、そんなことそのうち分かるだろ。それより、次はそっちを見ようぜ」
コジーはそう言ってシュガーの持っている本を指差す。
シュガー「……」
だが、シュガーは中々動かない。それどころか、そのままどこかへ行こうとしていた。
アッサム「ちょ、シュガー!?」
シュガー「私はクエストの報酬の分け前だけが目的だ。お前達に、私のもらった本を見せてやる義理はない」
コジー「は? お前、さっき “後で見れば良い” って言ってたじゃないか!」
シュガー「見れば良いと言っただけで、見るとは言ってないだろう?」
コジー「だけど……そんな! ズルいだろ!」
コジーの一言に、シュガーは立ち去ろうとする足を止めた。
シュガー「ズルい?………何がだ? 私はただ買ってきたゲームをやって、冒険者として旅に出ただけだ。その中で選ばれた勇者だの勝手に決められて。選ばれなかった私なんかが終わりにたどり着くより先に、誰かが終わらせる。……いや、選ばれなかった者たち用の別ルートが存在するんだろうな。……そんな正規ルートを迎えられるお前達などに、ズルいと言われる覚えはないのだが?」
コジー「そ、それは……」
それだけを言い残すと、シュガーは何も言わず立ち去った。
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