5話 : クエストクリア!!


僕は最初、何が何だか分からなかった。過去の記憶と現状が重なったところで、ようやく言い訳に入る。




アッサム「あ、いや、これは……その……勇者に憧れてて、それで…」



冒険者「……はぁ。まぁ いい。その道具はくれてやる。 その代わりと言っては何だが、クエストの報酬を分けてほしい。お前達が山を降りてきていると言うことは、クエストの白い花を見つけたんだろう?」



コジー「何だ何だ、兄ちゃんよ。このアイテムを落としたってことは、あの犬っころに殺られたんだろ? それは兄ちゃんの力不足じゃねぇのかよ?」



冒険者「お前は馬鹿なのか? ……あの狼のレベルを見なかったのか。相手のレベルを見ないなんて よっぽどの馬鹿なんだな。あの狼のレベルは50Lev。つまり、この中に入ったばかりの1Levには 到底敵わない相手だということだ。逆に、何でお前達は殺られなかったんだ? ………あと、私は男ではない。女だ」



アッサム「…?」




レベル…という言葉は分からないが50という数が大きいのは分かる。レベルというのが強さを表す単語なのだろうか?




コジー「あ、あの犬っころって、そんなに強かったのか……ん? じゃあ、何で俺らは殺られなかったんだ??」




コジーは腕を組んで、一生懸命に考え込んでいる。確かに。僕はまだしも、コジーと冒険者との違いはなさそうに見える。……強いて言うなら男か女かくらいだろうか。


僕も簡単に考えをまとめてみるものの、答えと言えるものは出て来ない。そんな僕らのことなどどうでも良いかのように、冒険者は僕らに背中を向け、今登って来た山道を下り始める。




冒険者「そんなことは私が聞きたい。それより、早く村に戻るぞ」



アッサム「あ、その前に祠によってもいい? 村長に聞きたいことあって……」



冒険者「…ちょっと待て。村長がいるのか!?」




冒険者は僕の言葉に弾かれたように振り返る。村には居ないのだから驚くのも無理はない。そんなことなど知らないコジーは冒険者の言葉を馬鹿にする。




コジー「村にいるだろ、村長なんだからよ。なんだ、お前は村長も知らねぇのか?」



冒険者「…お前は本物の馬鹿だったんだな。よく考えろ、どうして村長は村にいない? どうして祠などにいる? どうしてこの子供が知っている?………ん? この子供、どこかで……」




冒険者は僕が酒場にいた子供だとは分かっていなかったらしい。僕に顔を寄せ、記憶を遡ろうとしている。




アッサム「ま、まぁ、取り敢えず村長の所に行こうよ」




僕は近づけられた顔を離しながら話を進めようとする。二人ともそれに賛同してくれた。そして三人で赤ずきんがいる祠へと向かうことになった。













特に何事もなく山を下る。




コジー「………なぁ、祠ってどこにあるんだ? 俺にはただ山を降りているだけにしか思えないんだが」




何もなさすぎたのか、コジーが沈黙を破った。冒険者もそれに無言で頷く。




アッサム「もう少しだよ……あ。ほら、あそこ」




僕が指さした所に二人は目をやる。そして同時に声を上げた。




コジー/冒険者「お? ここって、あの犬っころのいた……」「ん? ここは、私が狼に殺された……」



アッサム「うん。そして、ここから こっち」




そう言って僕は道から逸れる。つまり、道なき山奥へと進んでいくのだ。




冒険者「おい! 子供のくせに、危ないじゃないか!」



コジー「そうだ、こいつの言う通りだ! アッサム、お前 村人なんだろ!? 襲われたら終わりじゃねーのかよ!」



冒険者「ちょっと待て、あの子供、村人なのか!?」



コジー「あ? だからなんだよ!」



冒険者「馬鹿かお前は! ……というか本当の馬鹿か。ここまでくると手の施しようがないな。いいか、よく考えろ。村人はNPCだ。だから普通、決められた動きしかしない………いや、それしか出来ないはずなんだ。なのに、何故、あの子供は自分の意思で動いている? あの子供は、一体何者なんだ!?」



村長「ほほほ。元気の良いやつらが来たの。遠くからでも良く聞こえておったわ」




コジーと冒険者が争っている間に、僕らは祠へと到着していた。




アッサム「この二人とは山で知り合ったんだ。ガーディアンのコジーと、冒険者の……えと…?」



シュガー「シュガーだ。あなたを村長とお見受けしたが、何故、このような所にいるんだ? 村長なら村に居て、村人を見守るべきではないのか?」



村長「ほほほ。そうだな。…その話はお主らがクエストをクリアしてきてからゆっくりと話すとしよう。ほれ、さっさと村に戻ってやる事をやって来い」




村長の言葉に僕らは顔を見合わせた。村長は、何かを堪えるような、そんな表情を浮かべていたのだ。




アッサム「……じゃ、じゃあ一旦 村に戻ろうか」



村長「アッサム、お前はどうするのだ?」




僕は村長の方を見た。その顔から、村長の言わんとすることが分かった。きっと、旅のことだ。




アッサム「どうって……?? 僕は別に冒険なんて行こうとは思ってないよ。だいたい、僕なんかが付いて行ったところで大した役にも立たないしね」



村長「そうか……もし、出ようと気変りしたなら、ダニエルには言って行くんだぞ。お前さんまで突然居なくなったら、あやつは……」



アッサム「大丈夫。僕は行く気なんてないよ」




僕はそう言い残すと、歩いて来たばかりの山道へと入っていった。


背後から二つの足音が付いてくる。




コジー「……なぁ、アッサムは一緒に冒険行かないのか?」



アッサム「まぁね。僕はただの村人だし。……僕が居なくなったら親父を一人にさせちゃうもん」



コジー「一人って、母親は……」



シュガー「別に、お前が居ても居なくても大して変わらん。それにお前の過去などに興味はない。もし、その話をするなら私のいない所でしてくれ」




シュガーの言葉でその場の空気が冷たくなる。結局、それ以降、僕らは村に着くまで一言も話さなかった。


















常連3「あら、やっと来たのね。さぁ、持ってきたものを見せてちょうだい」




常連のお姉さんはいつもと変わらない態度で僕らを迎えた。僕はバッグの中から白い花を取り出す。




アッサム「はい、これでしょ?」



常連3「そう、それよ。ありがとう。すぐに見つかったかしら? …ん? あぁ、情報だったわね。はい、これをあげるわ。きっと、これから役にたつだろうから」




そう言って差し出されたものを手にした。それは一冊の本だった。




アッサム「ありが…」




常連のお姉さんにお礼を言いかけたとき、カウンターの奥から出てきた親父に声をかけられた。




ダニエル「アッサム? …何を、してるんだ?」



アッサム「あ、えと……これは…」




「僕はコジー達の手伝いをしただけで…」と言葉を続ける前に親父は目をそらす。




ダニエル「………………お前も…」




それだけ言うと親父は店の奥に入ってしまった。




アッサム「…」



コジー「……ま、まぁ、とりあえず、何もらったのか見よーぜ」




そう言ってコジーは自分のバッグの中から、僕が貰った本と同じ物を取り出した。どうやら、一人一冊貰ったようだ。




シュガー「ん? 私は二人とは違うのだが…」




シュガーの取り出したものは、僕らの本の三分の一程の薄さの本だった。




コジー「?? なんでだ??」



シュガー「……そちらから確認しよう。こちらは後からでも見ればいい」




こうして僕らは分厚い方の本から目を通すことにした。






-*-*-*-


【アッサム ー村人ー】13歳(♂)


【ウル ー狼ー】6歳くらい(♂)


【シュガー ー冒険者ー】27歳(♀)


【村長 ー??ー】86歳(♂)


【赤ずきん ー想像上の存在ー】9歳(♀)


【コジー ー守護者ー】30歳(♂)

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