第2話 ステータス画面が一番ワクワクするよね

「起きて」

「起きなさい」

「起き、て、くだっ」


 ふんわりあるのかないのか解らなかった意識が、呼び声によって覚醒する。

 じんわりと視界が明確になり、自分が揺さぶられているのが解る。

 仰向けに寝ているようで、その実宙に浮いた心地で目を開けると、


「起きた」

「起きたわね」

「起っ、きた」


 三人幼女がこちらを覗き込んでいた。

 ぽんやりと丸い目を開いた毛糸の帽子を被った少女。

 キリッとした目で髪に簪を刺した少女。

 弱々しい目で鋏を胸に抱く少女。

 いずれもまだ幼い。


「あたしクロートー!」

「私はラケシス」

「アトロポス、ですっ」


 視線を向ける自分に向けてそう名乗る少女達。

 名乗られたからには名乗り返さなければならない。慌てて答えようとして、肝心の名前が出てこないことに気づく。


「あなたの名前はこれから決めるの!」

「自分で望んだことでしょう?」

「決め、ます、ですっ」


 そういうことらしい。とりあえず、疑問は脇に置き、頷いてみる。


「じゃあ、サイコロ振るよ!」

「賽は投げなさい」

「ダイス、を……振って」


 握る掌に感触があった。開いて除けば、そこにはいくつかのサイコロが乗せられている。

 何のためのサイコロなのか、疑問を思考せず身体は動いた。

 運命を転がす。


・ジョディー=リンリー

・アビエル=サーティース

・コルネリア=ランパード

・サム=ベケット

・ロレイン=ガヴァディ

・ロビン=ソメス

[1d6:3]


「貴女の名前はコルネリア!」

「今生は女の子になるのね」

「よろ、しくねっ」


 コルネリア、聞き覚えの無い名前。だが、不思議と納まりの良い響きに思えた。

 同時に魂の何処かで「TSかぁ……」と嘆きが沸き上がる気がした。


「最後にルールだけ! 1.サイコロを振るかどうかは自分の意志!」

「2.賽が振れるのは自分の関わる運命だけ」

「3.それ以外の運命はダイスの結果だけを可視化できる、……よ?」


 大事なことだ、とまたも理屈を超えた納得で、言われた内容を魂に刻む。


「それじゃあ! 私達はここまで!」

「お往きなさいな、貴方の魂の場所へ」

「よい、旅、を」


 頭を下げ、背後に感じる光のような道先へ振り返る。

 歩き、自然と拳を握り、踏み締める感触で自分を奮わせながら行く。

 これから始める人生が、悔い無きものにすることを決意しながら。

 意識を光が満たした。


   ●


 カランカラン……、と弾ける音が鳴った気がした。


A:ジャンルを決めるのだ→[1d9:1]


「ファンタジー路線……王道だ」 


A:魔王さん頑張らない→[1d6:2]

1~3 いる 4~5 いない 6 たくさん


「ああ、やっぱいるのか。中々ハードな世界観になりそうだなあ」


A:幼馴染→[1d6:3]

奇数 男 偶数 女


「男か……、まあ、腹割って話せる相手がいるだけ有り難いよな。でも今生は女だからちょうどいい、のか?」


A:産まれた共同体→[1d10:10]

1 辺境集落 2~3 村 4~5 都市部 6~7 首都近辺

8~9 お屋敷 10 熱烈歓迎王宮


「ファッ!? ……ま、まだだ。まだ初手が熱烈歓迎だっただけだ。俺の人生はまだ始まってもいない」


A:熱烈歓迎王宮→[1d10:2]

1,3 次期国王 2,5 二番目以降 4,6 私生児

7 世に出すには憚られる 8,9 従業員の子供でした 10 熱烈歓迎


「複数の継承権、次期国王を告げずに現王が御隠れ、始まる後継者争い……。おおぅ、もう……」


A:魔法素養→[1d100:60]


「そこそこ……俺らしいなあ……。でもこれドロドロの人間関係で生き残れる才能じゃなくない?」


A:魔法適正→[1d10:4]

1 黄金の鉄の塊の騎士 2~3 アツゥイ! 4~5 溺れるッ!?

6 土下座 7~8 風邪 9 プロレス 10 いあいあふたぐん


「水属性か。毒で死ぬ可能性は減った、のか……?」


A:幼馴染の魔法的才能→[1d100:5][1d10:2]


「えぇ……、こんなんで大丈夫なんですかね。むしろ俺が守らないといけないんじゃ……」


A:国家規模→[1d10:8]

1,10 新興国 2~3 大国 4 中堅 5~6 小国

7 宗教国家 8~9 帝国


「うわあ、これ成人するまで生き残れるのかも怪しくなってきたなあ。帝国ってドロドロしたイメージあるしな」


A:特色→[1d10:1]

1~2 経済 3~5 資源 6 運河 7 技術

8~9 人口 10 熱烈歓迎全部


A:国家ステータス→[1d100:62+20][1d100:63][1d100:15][1d100:99][1d100:98]

経済 82 資源 63 技術 15 人口 99 領土 98


「……すっごい超大国だあ。モンゴルか何かかな? さ、先に自分のステータス決めるか。べ、別にダイス振るのが怖くなったわけじゃないぞ!?」


A:基礎ステータス→[3d100:72・60・47]最高の環境と教育を施され各+20

武力 92 魔力 80  知略 67


「よし! これならなんとかなる! ……はず!」


A:幼馴染ステ→[3d100:12・5・8]最高の環境と教育を施され各+20

武力 32 魔力 25 知略28


「こいつヒロインだコレェ!?」


そう叫んだ後、再び意識は光に呑まれた。


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今回のリザルト

主人公:[1d20:13]+1人いる帝国継承権を持った皇女の一人。戦闘力マシマシでオラついているが、智謀に関しては脇が甘い。

幼馴染み:乳母兄妹のせいで人生難易度ハードを強いられる哀れな凡人。主人公にとっては本音を語れる貴重な人物なためヤンデられる。ヒロインで男。


帝国

 世界に覇を布き、大陸の殆どを併合してしまった超大国。オラついて戦争しまくり内紛鎮圧しまくりで文明技術は略奪品である。豊富な資源と人材で国体自体は風格出しまくりである。主人公を含めた後継者争いがどのように行き着くかはダイスのみぞ知る。

 たぶん勢いのままヨーロッパ西岸まで辿り着いちゃったモンゴル。

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