我々の人生が本当に我々自身によって営まれていると、誰が証明してくれるのでしょう?彼らが好奇心であの場所へ行ったのも、自らの正気を捨て去ったのも、実はあの冒涜的な神々の手慰みに過ぎないのです。ほら、ここにあるのは彼らの様子を見る事が出来る扉です。ちょっと手を伸ばせば、この世の真理が待っているかも――
筆者の解説にもあるように、この小説には底本がある。クトゥルフTRPGシナリオ「悪霊の家」だ。骨子は元になったシナリオを踏襲しているが、元はこんなに爽やかではない。こんなに、邪悪ではない。肝試しをする高校生の溌剌した導入から始まり、手記を見つけることで一気に物語は加速する。加速するだけでは終わらない。高校生たちに向けられた悪意は、真の悪意は別にあるのだ。
ムードのある舞台から、一冊の手記を切っ掛けに怒濤のように走り出す展開。幽霊屋敷の探索する少年少女。ありきたりなホラー?いやいや、ラストの【黒幕】には皆様度肝を抜かれ、肝を冷やすでしょう。あなたも同じ場面に会うことがあるかもしれないけれど。あなたは、どんな顔をしてるのでしょうね?
実録っぽい描写がもうただの学校の怪談話で終わらない。その影に邪神がいるだけで、恐怖が倍増してました。詳しいことは、詳しいレビュアーさんにおまかせです!
紹介文で書かれてる通り、TRPG『クトゥルフの呼び声(コール・オブ・クトゥルフ)』のサンプルシナリオを題材にした短編ホラー。そこから想像したオチは「あっ、そっちか!」という、私の予想とは異なる方向へ着地しておりました。そう来たか……。登場人物名がアルファベットなのは実録怪談っぽさがありますね。手記の終盤部分、切り取る~うんぬんは、作者のこだわりが見える感じです。
肝試しに行った先で見つけた一冊の手帳。書かれていた内容は徐々に狂気に傾倒していく。 全てを見透かしたような文面。そして意外な真相とは。 クトゥルフを知らなくても楽しめますし、知っていればなおさら邪悪さに戦慄する短編。 全てはダイスの導きか、『彼ら』の気まぐれか……。