選挙免許

「本年度からわが国では選挙免許を導入しました。それに伴い従来の選挙は廃止されます。つきましては・・・。」


20xx年。日本では新たな法案が可決された。それが俗に言う選挙免許法案である。


「ったく選挙するのに免許が必要なんてふざけた制度だよな。」

「でもこれによって選挙の投票率は格段に上昇すると思うよ。」

「だけどよ、いちいち免許なんて取りに行くわけないじゃん。」

「でもこの免許持ってないと公共サービスが受けられなくなるんだよ。」

「・・・なんだって?」

「免許の取得と引き換えに選挙権を得るだけじゃなくて、公共サービスを受ける権利も得るんだよ。だから免許を取得しないことは選挙権だけでなく、公共サービスを受ける権利も失うことを意味する。」


この法案は選挙の投票率を上げるだけでなく、公共サービスの予算削減も見込まれているのだ。


「そしたら免許取らなきゃならないな・・・。げ、免許取得に5万円必要だと?しかも毎年更新が必要?」

「新たな収入源でもあるんだね。」

「ふざけんな。こうなったら首相を代えさせてやる。」

「その為には選挙で投票しないとね。」

「どっちにしろ免許取得しなきゃならないのか・・・。」


こうしてほとんどの人間が免許を取得することとなった。それから3年後。とある政治家とその部下が会話している。


「全く。選挙に出るために選挙出馬免許を作れだと?ふざけたことを言いやがる。」

「しかし民衆の支持を得るにはこの条件を飲むしか・・・。」

「ぐぬぬ。仕方がない。だがそれでも民衆は悲惨だな。」

「ええ、選挙免許を取得するために免許取得の免許を取らなくてはならないなんて。」

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