しりとり

「そこのおまえさん。ちょっと勝負しない?」


ここはカジノ。金と騙し合いの場所。


「勝負って・・・。私はトランプもルーレットも全然勝てないんで、結構です。」

「そんな勝負じゃないって。やるのは しりとりさ。」

「しりとり って子供が良くやる しりとり ですか?」

「そうそう。語尾つなげてくやつ。」

「それは確かに私でも出来そうですけど・・・。」

「ルールは簡単。制限時間内に使っていない言葉を言ってけば良いだけさ。」

「それくらいなら、やっても良いですけど・・・。いくら賭けるんですか?」

「一勝負1000円。」

「安いですね。それならやりましょう。」

「よしきた。」


まず互いの持ち点を1000円とする。5秒以内に言葉が出てこなかったら100円失う。一回使われた言葉を使ったら200円失う。制限時間は3分。


「こんなとこでどーだ。」

「で、最後に買ったほうが全額貰うと。」

「そうそう。ちなみに持ち点が無くなったり、ん で終わったらゲームセットだからな?」

「分かってますよ。それじゃ、やりましょうか。」


こうしてゲームは始まった。


「(しりとり なんて所詮余興なんだから・・・。賭け金も1000円だし軽く遊ぶか。)じゃあ私からで。りんご。」

「ごりら。」

「(やっぱり普通の しりとり か。)らっぱ。」

「パリ。」

「り、リス。」

「すり。」

「り・・・。陸。」

「栗。」

「(そうか。こう言う戦術か。ならば・・・。)料理。」

「・・・。理科。」

「(よし!)狩り。」

「利子。」

「しり。」

「利口。」

「瓜。」

「りんご。」

「200円失いましたね。ごま。」

「鞠。」

「くっ・・・。」

「5秒経った。100円失ったぞ。」

「リス。」

「200円失ったぞ。酢。」

「巣。」

「素性。」

「う・・・。瓜。」

「それも使った。200円失った。料理。」

「200円失いましたね。えーと、・・・。」

「100円失ったぞ。」

「くそっ。料理。」

「200円失ったな・・・。料理。」

「(そうか。料理を言い続ければ最初の残高が少なかった私が負ける・・・。)すいません。私の負けです。」

「気付いたか。」


こうして 賭けしりとり は終わった。


「しりとり 強いんですね。」

「まあな。それじゃ。さいなら。」

「ええ、また。」


男は去っていく。すると近くで見ていた女がこう呟いた。


「今行った彼。しりとり の世界チャンピオンなのに・・・。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る