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「そこのお嬢ちゃん、ちょっと話聞いて行かないかい?」


夜に新宿の道端でそう声を掛けられた。最初はちょっとしたナンパだと思って、断り辛かったし軽い気持ちで話を聞くことにした。でも段々と、話が変な方向に進んだ。


「実はさ、俺科学者なんだよ。最近素晴らしい発明したんだけど試してみない?」

「・・・えっと、何の発明なんですか?」

「よく聞いてくれた。発明したのは・・・どんなに食べても痩せる薬だ。」



「お疲れ様です。佐藤警部。」

「やあ、高橋刑事。調査の進展はどうかね?」

「それが・・・、死因は分かりました。」

「おお、死因が分かったのなら犯人もすぐ捕まえられそうだな。」

「いえ、また今回も厳しそうです。」

「・・・今回も、という事はやはり。」

「ええ・・・、今回も例の一連の事件の1つですね。」



「痩せる薬?」

「そう、食べても食べても痩せる薬。」

「ふふ。」

「急に笑ってどうしたんだい?」

「もし本当にそんな薬があるんなら、あなたは女性にとって救世主よ。」

「そうだな、そして俺はその薬を作り上げた。」

「ならそれを見せてみなさいよ。」

「これさ。」

何て事はない、ただの錠剤のようだった。

「これがそうなの?」

「ああ、仕組みを説明しようか。」

そこで男は不敵な笑みを浮かべる。

「脂肪って知ってるかい?」



「しかし、これだけ被害者が出ているのに犯人が捕まらないなんて。」

「この手の輩は隠蔽の仕方が上手いからな。」

「しかし、いくらなんでも同じ一手のみでこれだけの人数を手にかけるなんて・・・。」

「犯行手段以外にも共通点はあるさ。そこから絞り込んで行こう。」

「そうですね。被害者は全て女性である。これが唯一の手がかりです。」



「当たり前でしょ。脂肪くらい分かるわよ。」

「ならば話が早い。開発した薬は全ての脂肪を分解するのだ。」

「つまり食べた物の脂肪を全て分解するから太らない、と言いたいのね。」

「その通り。話が早くて助かる。」

「でもそれって人体に影響ないの?」

「その点は心配ない。この薬は胃を通過したら自然分解される仕組みで、その上、胃の表面はタンパク質で覆われている。つまり分解されず全く問題は無いということだ。私自身も試している。」

「ふーん・・・。」

「ちなみに事後アンケートの満足度評価は32人中全員が満足度最高と答えてくれたぞ。」

「じゃあ試してみよっかな・・・。」

私が覚えているのはここまでだ。



「しかしやっぱり変ですよね。32人も同じ手口なで殺られるなんて。」

「そう言えば死因は何だったんだ?」

「多量出血による失血死です。」

「随分とシンプルだな。しかし死体はとても綺麗だった覚えがあるが。」

「表面は綺麗ですよ。出血していたのは胃の表面なんですから。」

「そうか・・・。検出された薬は脂肪のみを溶解させるのか。」

「ええ、胃の表面は主にタンパク質と脂肪により構成されています。そして脂肪の方が割合が大きいのでそれが溶かされることによって・・・。」

「恐らく被害者は犯人に騙されて薬を飲んだんだろうな。」

「全くもって許せません。」

そこに一本の電話が・・・。

「・・・はい。そうですか。分かりました。失礼します。」

「どうした?」

「・・・33人目の被害者です。」

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