プレゼント

今日は私と彼が出会ってからちょうど1年の記念日。でも彼は忘れているんだろうな・・・。今まで1回も記念日を祝ってくれたことなんてないし。


「絵美、おめでとう。これはプレゼントだ。受け取ってくれ。」


正直、ガサツな彼が記念日を覚えているとは思っていなかった。だから覚えていてくれたことが余計に嬉しく、


「すごく嬉しい。本当に・・・。」


思わず泣き崩れてしまった。その姿を見て彼はとても幸せそうに顔をほころばせる。そしてその日から彼は記念日にプレゼントを渡してくれるようになった。



「はい、付き合ってから1年半の記念。プレゼントだよ。」

「ふふ、ありがとう。」


端から見ればただのバカップルに見えるかもしれない。けれども私たちにとってはこんなに幸せな時間は他に無かった。そう、この時以外にはもう無かったのだ。



毎日のようにプレゼントを貰うことが当たり前となってきた頃、プレゼントの中身は最初に比べてどんどんと高価な物となっていった。


「今日はブランドのバックだよ。」

「はい、ルビーのネックレス。」

「ダイヤの指輪だよ。付けてみて。」


こんなに高価な物は必要ないと断るも結局は彼の悲しそうな顔に負け、受け取ってしまうのであった。


そんなある日、彼はいつも通り箱を抱えながら私の前にやってくる。


「今日のプレゼントは何だと思う?」

「全然分からないよ。何なの?」

「開けてみて。」


そう言って渡された箱を開けると、中からマイクのようなものが出てきた。


「これは何?」

「これは君の声を録音する機械さ。」

「私、歌手になりたいわけではないんだけど。」

「うん、だけど声を録音してもらうよ。」


私は彼に少し違和感を感じた。しかし気のせいであると自分に言い聞かせた。


その後も自分には必要の無さそうな物ばかりがプレゼントされていく日々が続いた。そしてついにその日はやってきた。


「はい、プレゼントだよ。」


渡されたのは私の背丈よりも大きな箱であった。開けてみると・・・、


「な、何これ!!」


中には私が入っていた。よく見ると限りなく精巧なロボットであることがわかったが、薄気味悪かった。


「こんなもの何に使うって言うのよ!」

「嫌だなあ、今日のプレゼントはこれじゃないよ。」

「じゃあ何なの?」

「君がプレゼントさ。」


そう言うと彼はロボットの電源をつける。


「さあプレゼントだよ、受け取ってくれ。」

「エエ、ワカッタワ。ウレシイ。」


ロボットが私の方を向く。


「このロボットは今まで君に贈ってきたプレゼントのデータを基に作り上げたんだ。最後に君の体をこのロボットに取り込むことで、僕は君の存在を永遠に側に置いておけるんだ。素晴らしいだろう。」

「何勝手なこと言ってるの!やめてよ!」


ロボットに掴まれる。


「いやっ、離して!」


しかし抵抗虚しく、ロボットに飲み込まれてしまった。


「さてと、これで私への生涯最高のプレゼントは完成した。あとは完璧な形で私が受け取るだけだ・・・。」


ロボットは箱に戻っていき、蓋を閉じてラッピングのリボンを結び・・・。

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