副業
「次は何を持ってくりゃ良いんだ?」
「そうだな・・・。カレーを作りたいから北海道産の玉ねぎとジャガイモ、それから島人参を頼む。」
「また随分と変なもんだな・・・。分かったよ。」
小島玄太はとある会社に勤める普通のサラリーマンである。ただ一点、副業をしていることを除けば。
「しかし言われたものを持ってくるだけで、毎回必ず1万も稼げるなんて最高だ。」
そう、副業の内容は お使い であった。言われたものを持っていく。すると報酬として1万が支払われるという仕組みだ。しかし頼まれる物は若干変なものではあれ、入手にはそれほど苦労せず、高くもないため割が良すぎる副業であった。
「最初はチャーハンを作るとかで調味料系と小葱、その次はチャーハンの米が欲しいとかで玄米が必要とか・・・、あの人何やってる人なんだろう。」
この副業は街角で偶然声をかけられて始めたものだった。最初は半信半疑だったが、実際にやってみてちゃんとお金が振り込まれることを確認すると、次第にのめり込み、今では結構な頻度で行っていた。
そんなある日、男は小島に言った。
「実はこの街を離れることになった。だから次でこの副業も終わりだ。」
「そうか・・・。それは寂しいが仕方がない、最後は何を持ってくりゃ良いんだ?」
「いや、持ってくるのではない。これをこの住所の所に届けて欲しい。」
袋が渡される。
「この袋か?何が入ってるんだ?」
「ふふ、気になるか?」
何だか不気味な笑みだった。
「いや、とにかく届ければ良いんだな。分かった。今から届けよう。」
「ああ、頼むぞ。・・・この副業はどうだった?良かったか?」
「ああ、最高の副業だったよ。」
「それは良かった。」
小島は言われた住所付近にたどり着く。
「ただの住宅街じゃないか・・・。お、ここが言われた場所か。」
そこである物を目にする。
「ん・・・?これってこの前俺があの人に持って行った太鼓じゃないか?なんでこんな所に・・・。」
「貴様が小島玄太だな。」
気付くと後ろに警察が集まっていた。
「はい?そうですが・・・。」
「貴様を殺人及び死体遺棄の疑いで逮捕する。」
「え、なんですって?」
そのまま署まで連行される。
「私は何も知りませんって!」
「嘘をつくな。最近、都内で起きていた連続怪死事件は貴様の仕業だな。」
「何のことですか!」
「とぼけても無駄だ。現場には貴様の指紋がついた小葱、島人参、玄米。そして今日の現場には太鼓が落ちていた。それぞれの頭文字で自分を誇張するとはいかにも犯罪者らしい。」
「だから知りませんって!ただ言われたものをあの人に持って行っただけですから。」
「では貴様が今日持っていた、死体の血がベッタリついたナイフが入った袋はどう説明するんだ?これにも指紋が付いていたぞ。」
「それもあの人に渡されたんだ!私じゃない!」
「現場に犯行に使われた凶器を持って立っていた男以外に犯人などいるわけないだろう。」
「どうしてこんな事に・・・。」
警察が確認すると、小島の口座には1万が振り込まれていた。それから39円も。
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