第一章「始祖、君臨」

Chapter-001:FOUNDER REIGN

C-001-Section-001:Metempsychosis

(母ちゃん…?)


 失った意識の中。記憶の入り口が開かれる。

 懐かしい感じ。それは母親の記憶。

 いつもは父親を失った忌まわしい記憶だったが、母の温もりがブラッドを包んだ。


「希望は生まれる前から絶望なの」

「私はその宿命に、自由からの解放を待ってる」

「待っているの」

「終わりを齎すのは常に始まり」

「心に現れる自らの意志。私はその重なりを待つの」

「神印の巫女。守り人の勇者」

「それはいずれ引き合わされる運命だけど」

「私はその宿命に、自由からの解放を待ってる」

「待っているの」


 無数の棺に囲まれ、後ろ姿しか確認できない女性は背中から翼が発生すると、赤い網に包まれた巨大な球体に向かって飛び立って行った。

 まるで、母が夢の中に会いに来てくれた。そう思える夢であった。

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