第二章「至聖三者」

Chapter-002:THE TRINITY

C-002-Section-001:Complex

 ブラッドの家の残骸の前に、兵士達が集まっていた。


「汚染物質の確認はされていません。いえ、それどころか、破壊された自然物の部位からは、新たな芽吹きが発生しています。動物達も一部損傷を負ったようでしたが、再生しています。ええ、精霊因子だと思われますが、ここまで完璧な精霊因子。はじめて確認しました」


 兵士の一人が、上司と電波交信をとっている。始祖との戦いの状況は兵士が説明した通りだ。


「紅蓮カルディア一行が通るぞー!」


 他の兵士達が、その声と共に道を開く。クォーターとティア、キュートの三人だ。だが、兵士達の視線はあまりよいものとは言えなかった。


(例の協会の団体だろ? オレ達兵士がいるのに、なんだって国王はあんな連中に仕事を任せるんだ? あんな子供のお守りする為に、オレは上京したわけじゃねえぞ)


 兵士達は、小声で嫌味を垂れる。ティアは全く気づかず、キュートは聞こえていたが無視し、クォーターはある程度予測できた反応だと気に止めなかった。

 そして、現場では生存者の面々が集められていた。キュートは呆れ顔でその内のカイ達三人組を見る。


「情けないな。何の為に三人組のキミらをわざわざ派遣したのか。こんな様じゃ、減俸は免れないな。覚悟しておくんだな」


 キュートは厳しく、彼ら三人組を叱責する。減俸と聞き、目を潤ませ同情を乞うカイだったが、スルーされた。


「まあ、仕方ないですよ。敵の能力も不明でしたし、カイさん達はよくやってくれたと思います。ところで、巫女さんは、あなたですか?」


 ティアはカイ達を認めて、責任については言及しない事にした。そして、テオリアを巫女だと問う。頭に?マークを浮かべたテオリア。リックは、ティアに「その女性ではありません。彼女です」とリルを紹介する。


「あなたが、巫女さんですね。私はティア。ティア・カタルシスです。あなたをサポートする為に来ました」


 巫女との出会いを明るく嬉しく思うティア。リルは、よく事態が飲み込まなかった上、ティアの明るく純粋な対応に、少し戸惑う。


「名前。聞いてませんでしたね。あなたの名前は何ですか?」


 明るく元気に問うティア。対してリルも自分の名前を明かす事にした。


「私はリル。リル・クレスケンス」

「リルさんっていうんですね! 可愛らしい名前です。これから、あなたのサポートする事になります。宜しくお願いします!」


 名前を聞き、ティアのテンションは更に上がる。そして、ティアは、リルの胸元をマジマジと見る。


「え? ど、どうしたの…?」


 その反応に少し怯えるリル。そして、次の瞬間、ティアは真剣な表情をして大きな声でリルにこういった。


「おっぱい、大きいですね!」


 決して悪気はなかったティアの一言。

 リルはとても傷ついた表情で、思わず涙ぐむ。それを見てびっくりするティア。何か悪い事を言ったのだろうか? と動揺する。

 胸の事を言われる事が嫌だったリル。その事情を打ち明ける余裕もなく、ティアも知る由もないまま、二人の初対面は終わった。

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