C-001-Section-010:Revelatory Dream

 上半身がまっぷたつとなった翼神の始祖タイニーを見て勝利を確信したブラッド。

 しかし、翼神の始祖タイニーの傷口はみるみる再生し、再びブラッドの前に立ちはだかった。


「マジかよ…! とんでもねえ質量の精霊因子だな。魔族の再生能力なんて比じゃねえぞ」


 関心すらしながら、始祖の力に驚かされるブラッド。

 しかし、もう策はない。

 次の瞬間、翼神の始祖タイニーの翼の無数の刃が、ブラッドの体に突き刺さった。「ググッ!」と刺さった痛みを堪えるブラッド。しかし、容赦なく次の刃が無数に放たれ突き刺さる。


(いてえ…。死ぬのかな、オレ? リルを守れないまま、親の仇もとれないまま、死ぬのか。ダサすぎる。何もできない。オレは)


 薄れ行く意識の中、痛みは遠退き、ブラッドは死の世界に放り込まれた。


(死んだのか。オレ…)


 その光景は死を表していた。黒い粘膜のようなものが、ブラッドの体に粘着している。とれない。いや、とる気になれない。体が死を受け入れてしまっている。このまま、受け入れてしまうしかない状況に、ブラッドは抵抗できなかった。

 このまま、永遠に覚める事のない夢のような心地に、堕ちていく。記憶もだんだん薄れていく。リルや、兄。父親、母親。全てが死に白く塗り替えられていく。


「情けないなぁ~、キミは」

 

 暗闇の視界に一筋の光。ブラッドの目の前に小さく現れた物体。翼を生やした小人のようだ。


「ダイクの息子ってこんなによわっちー存在だったなんて。せっかくキミの魂の中に入って、成長を楽しみにしてたのに。残念」


 父親の名前を出したその物体に、ブラッドは閉じようとしていた瞳を少し開いて見つめる。


「ネメシスなんかの言いなりにならないで。キミは守りたいんだろう。恋人を? さあ、望みなよ。人の間にある自由を。創造にも破壊にも使って良い。その力を」


 光を放つ小さな物体はブラッドを黒い粘着から解放し、ブラッドは宙に起き上がる。

 そして、物体は小さな短剣に変わり、ブラッドの手の中に収まった。


「さあ、ボクを握って。そして、手にボクを刺して。そうすれば、力が解放される」


 短剣に宿った声に言われるがまま、自然とその短剣を握りしめた。そして、力いっぱい手に振りかざし、その刃が刺さった瞬間、ブラッドは力を解放する。黒い景色が吹き飛び、背中からは赤い翼が生じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る