C-002-Section-002:Sarcasm
「…久しぶりだな」
不器用な言葉で、言葉を掛けるクォーター。だが、どこか心配そうな眼差しだ。向けた声の相手は、意気消沈する自身の弟であるブラッドであった。テントの中に保護され、二人は再会した事を嬉しがる余裕なく、話を進める。
「ああ、久しぶり。騒ぎが大きくなっちゃって、アニキの仕事になっちゃったんだ。ごめんな。面倒かけて」
疲れた様子だったが、兄の事を優先するブラッド。クォーターは暫く黙った後、ブラッドの両手を握った。
「オレの事はいいんだ。それより、無事でいてくれてよかった。治療後、すぐに違う住居を用意しよう。そこでまたリル君と住めばいい」
クォーターはブラッドの心を包み込むように優しく言った。ブラッドは俯いてその言葉を聞いている。唯一の家族である事。それが互いの絆を強調している事の証明でる所以。二人は互いを尊重する理由でもあった。
「クォーターさん。彼、大丈夫ですか?」
テントの中の様子を見に来たティアがクォーターにブラッドの様態を問う。そして、そのままテントの中に入り込んで、ブラッドに挨拶を始めた。
「あなたが巫女の守り人さんですね。確か、ブラッドさんでしたよね? 私は、ティア。ティア・カタルシスです。初めまして。宜しくお願いします!」
ブラッドもまたリル同様、彼女の明るく元気なオーラに呆気をとられていた。だが、ティアは気にした素振りも見せずに、話し相手をクォーターに変える。
「クォーターさん。ブラッドさんは本日から紅蓮カルディアに所属する事とします。これから協会へ戻って、これからの事を話し合いましょうね」
平然と明るく、ティアの言った言葉にクォーターは今までの表情を一転させ、強ばらせた表情でティアに反対する。
「何を言うのかと思えば、ブラッドは関係ない。…そうか、最初からその予定でここに来たんだな」
「ごめんなさい。騙すつもりはなかったんですけど、言えば反対するからってビヨンドお爺ちゃんに言われてたんです」
理解されている事がこんなに皮肉になる。クォーターは、その皮肉を痛烈に感じた。手を顔に当て、左右に振るクォーター。ブラッドは話が見えず気になったが、クォーターの様子の方も心配であった。
ティアは話を再びブラッドに切り替える。
「知っている真実は洗いざらいお話しします。ブラッドさん。リルさんを守りましょう!」
ブラッドの両手を握り、ティアは相変わらずの明るい澄みきった表情でこれからの未来を見据えていた。
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