C-001-Section-008:Personality

 タイニー・フェザーは、養成学校ヴィータでは非凡な生活を送っていた。目立たず、秀でるものもなく、ただ、そこにいるだけの学校生活であった。だが、それは人としての姿としてである。


「タイニーって本当に目立たないよね~」


 今時の女子生徒がタイニーにそう言った。その時は愛想笑いで交わしたが、本当は悔しかった。自分は人ではないが、その異なりに個性があるわけではない。正直、この養成学校の生徒達の努力は共感できた。教師は屑が多かったが、生徒達の個性を見ていて、彼女は羨ましかった。


「生徒達が個性があるわけではないよ。予め世界に用意された個性を選択して、それを個性とキミが錯覚してるだけにすぎない。純粋個性を人が持つなんて事はあり得ないんだよ」


 それを否定したのはネメシスであった。本来の個性は自然的なものであり、そこにある生命は本来の持ち主ではないというのがネメシスの見解だった。そうして次のようにも語っている。


「人は自然の中で、生かされている。自然からしてみれば、面白味もない存在だよ。人なんてものは。キミ達、始祖こそ、自然の中で生きているべき存在。その資格こそ、ボクは個性と呼べるものだと思うよ。だから、この惑星にとって始祖は良きパートナーとなる」


 始祖こそ、惑星モラトリアムの後継者。その為に人を統治する。その為の神の印の儀式。

 そして、その時はやってきた。

 ネメシスはその時を、こう告げた。


「キミ達オリジンシリーズは、力を発揮する為の唯一のコアを共有する事はない。それが神の印の儀式における始祖のルール。コアは翼神の始祖。キミを選んだ。キミが終わりを迎えた時、コアは新たなオリジンへと継承される」


 コアが、タイニーの胸へと埋め込まれる。そして、始祖としての力が開放される。異なりに力という個性が宿る瞬間、翼神の始祖タイニーは人の個性なき力に終わりを告げた。

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