第5話 そんな現象、起こり得るの……!?

 一緒に付き合って《あそんで》きて葉子が理不尽に怒っていると感じる事もあるけど、今回は心配そうな声音だったので申し訳ないと表情に出して恐縮しているくらいしか出来ない。

「朝から頭痛がしたから病院に……行っていただけだよ」

 半信半疑な葉子が頬を膨らませている。僕は話を聞いた今でも葉子が包帯をしている箇所が……と思うとどんな言葉をかけたらいいのか適切な言葉を見つけられずにいた。

「まぁ、いいわ。今度は気をつけるんだよ!」

 何を気をつければいいんだと一瞬思ったが、それよりも――


 僕は葉子に「それ、信じるね」という感じで接してもらった。心から信頼するというこれ以上ない笑みで受けいれてもらう。


 その笑顔を見て、僕は葉子の母親から聞いてしまった事を思い出していた。

「……秀英くん、ようちゃん……葉子は……」

 僕はもう葉子の状態を知っていて、いつも通り接するなんて出来ないと思った。勇気を振り絞ってすべてを知ったと伝えるしかないと決める。

「~~~~っ!! ごめん本当は違うんだよ!!]

「え?」

 どこか憂いを秘めた表情で僕は

「実は今日の朝、聞いちゃったんだよ……」

 僕の口から改めてこの事実を告げられた葉子がどんな反応をするのかと怖くて仕方がなかった、けど避けて通れる道じゃないと覚悟を決めようとした結果、そうしようと思った。

「……葉子の……病気のこと……」


        ◇         ◇          ◇

「葉子は……インビジレイザーって診断を……」

 僕は頑張っても完全には受け入れられず。

「えっ」

 だからその病気の特徴を確認しようともう一度訊ねた。

「イ……インビジレイザーっていうのはなった人が透明になっていくという怪奇現象のはずじゃ? そんな嘘みたいな話」

 葉子の母親もそういう反応は当然だと思ってくれたようである。

「……そうよね。私も信じがたいことだって受け入れるのに時間が必要だったわ」

 焦っているせいか口が乾き始めた僕。それでもどうにか質問すると、当然葉子の母親も診断されるまでインビジレイザーという病気を信じてなかった事を告げられる。

「基本的にはどこの病院も気のせいだとか光の加減だとかさじを投げたようないい加減な解答しか聞けずにいたわ……でもその病気を独自調査している病院のお医者さんに行き着いたの。その方に怪奇現象との噂もある病気の症状と限りなく似ているから間違いないだろうって……っ! どうしよう秀英くん! あの子……消えちゃうだなんて」

 そこまで話してくれた葉子の母親。これ以上は……って涙腺が崩壊したのかと感じるくらい涙を流すだけになってしまった。なので、僕はかける言葉もなく立ち尽くすしかなくなった。


(……葉子が……消えちゃうの?)

 僕も葉子の母親と同じく、現実を受け止めきれない。僕が授業で失敗したりクラスの友達とかの関係に苦労していると葉子が優しい眼差しで僕を無言で励ましてくれた。時にはさりげないフォローを入れてくれたりも。

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