痛いのは周りだけ
俺は太郎。
家を出ると、我が愛しのフィアンセ、花子が迎えに来てくれた。容姿端麗・才色兼備・頭脳明晰…この世のありとあらゆる褒め言葉は彼女の為に存在しているのではないかと思うほど、彼女は
近所の
はてさて無事に高校まで到着した俺達は、別クラスという
名残惜しいが、最後に彼女とじっくり見つめ合ってから、俺は自分のクラスに向かった。彼女のためにも、今日も生き残ってみせる!
いつもの時間に太郎君の家に迎えに行く。太郎君とは幼馴染で、一年ほど前に私の方から告白して、OK貰って、恋人同士になって。こうして、太郎君と一緒に、毎日仲良く登下校している。
太郎君は、正直少し変わっている。最近遊び始めたゲームの影響もあってなのか、私が理解できないような言葉を流暢に話す。英語に何か独自性を付け足したような言葉がほとんどで、他の子達はドン引きしてたりしたけど、私は面白くて良いと思う。何より太郎君が楽しそうなので、これからも周りを気にせずに続けて欲しい。そんなわけで、私の彼氏は端から見たら痛い人物なのだけど、私はそんな彼が大好き。
家から出てきた太郎君と昨日ぶりの再会を喜んで、軽く抱き合ってから、手を繋いで登校する。以前、野良犬に吠えられて怯える私を落ち着かせる為に、ずっと手を握っていてくれたのがきっかけだった。彼は一途で本当に優しい。太陽のように温かく大きな彼の手は、私の不安を簡単にかき消してしまうほど頼もしいのだ。そして、辺りを警戒しながらも合間に見せてくれる彼の眩しい笑顔が、これまたどうしようもなく好き。そんな彼に、私も負けじと笑顔を返すのが密かな楽しみである。
学校に着くと、彼の表情は一気に暗くなる。別にいじめを受けているわけではなく、私とのひと時の別れを惜しんでくれているのだ。寂しげな彼の表情を見ていると、今日一日大丈夫だろうかと心配になってくる。それが顔に出てしまうのが私の悪い癖。彼はすぐにそれを察して、私を抱きしめてくれる。本当に優しい。どこまでも、どこまでも。少しでも彼の心を癒せればと、彼の頭を優しく撫でてあげることしか私にはできないが、再び笑顔に戻って、元気いっぱいに「言ってくる!」といつもの調子を取り戻してくれるので良かった。
彼の姿が見えなくなるまで見送ってから、私は自分の教室に向かった。この後、部活の朝練で先に登校している友達にからかわれるのが日課だが、私の方も、彼女の胃がもたれるほどおのろけ全開なのでおあいこということで。
発言や発想、何かとズレている彼。そして、そんな彼を愛した、価値観のズレた私。ズレた者同士、お似合いのカップルという訳だ。客観的な観点では論外に思える相手でも、当人同士の主観ではありえないがありでしかないに変わるのだから、恋愛というものは奇妙で面白い。主観依存だと、盲目的な恋と言われるかも知れないが、周りに迷惑を掛けないのであれば、そんな恋でも良いんじゃないかと私は思いたい。
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