1917

百年前の砂漠で折れたサボテンの

涙が作った川が誰かを救うなんてさ、こともあったりして

海底の忘れられたような帆船の

奥で眠る、骸骨が愛した人も、もう死んでるさ


生き残ったのが、絶滅危惧種のあの木だって

その気持ちを知ってる人は、もう居ないさ


孤独な人の、涙が滲んだ日記帳も

1000年経てば、ただの砂に変わるだけなんだから

空に響いた、あの王様の最後の声も

誰かの吐いた、二酸化炭素に変わってしまったさ


午後の日差し

揺れる緑の大行列の庭

その中で

泣いて居た、女の子


魔法みたいに

フィルムの中に閉じ込めたってさ

そのそれも

何かしらで説明されて

分解されて

つまんない理由にされちゃうんだろ

もう、どこにも無いんだってさ

ただの化学反応だってさ

時間なんて、無意味なんだろ

「早く、大人になりなさい」なんてさ


割れた苺のジャムの瓶

明日には地面に還ってるさ

その記憶だって

僕が死ねば灰になるだけさ


百年前の砂漠で折れたサボテンの

涙が作った川が誰かを救うなんてさ、こともあったりして

なんかそんなことが

あって欲しいだけさ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る