七
母は昔からステロイド治療を頑なに拒んでいた。
私は良くなるのであれば、受けたかったが、
母の答えはいつも「NO」だった。
理由は単純なもので、
私が幼い頃にちょっとした手術の際、
軽いアトピー性皮膚炎を見た主治医が、ステロイド治療を勧め、結果酷く悪化した事だった。
母は元々大層大らかだが、その件の後、
とてもハウスダストや、食品、色々なことに過敏になってしまったのだと思っている。
しかし、あまりに酷くなった私の症状により、
大きな病院で診て頂いた時、
その時の医師の一言と、母の表情は忘れないだろう。
「ここまで酷くなったのは、お母さん、あなたのせいです。今治さなかったら一生この子はこのまま酷い症状のままですが、それでもステロイド治療をしないのですか?」
母の顔は、哀しさと、後悔と悔しさと、
私では測りきれない沢山の混沌とした顔だった。
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