2話目

私の高校生活のパズル。

1つの足りないピースのせいで、一気に台無し。もう完成させられないのかな。


…いや、頑張れば。

だけど、相手がいない。


大失敗に終わった告白を思い出し1人反省会を開いて自己嫌悪に陥りながら、はあ、と溜息を吐く。


「はぁ…絶望の淵に立たされたような気分ってこんな感じなのかな…」


「あっ!いたいたっ、探してたんだよ!」


ぶつぶつとわけのわからないことを呟き続ける私の元に駆け寄って来たのは中学時代からの親友でもあるもえ

その名の通り、本当に人を萌えさせるという点ではこの子に叶う人はいないだろうというくらい可愛い子だ。天使かよ…。



「ん?萌…どしたの、私はたった今振られたばっかりでちょっと悲しみの渦の中心にいるんだけど、萌の話なら聞くよ」


「えっ、振られちゃったの!?」


さらっと報告して流そうとしたつもりだったのだが、しかし食いつかれてしまった。


「うん、そう振られたの」


繰り返して言う度に心がじりじりと焼けるように痛む。


「そっかぁ…なえちゃんを振るなんて、見る目がなかったんだねきっと。」


萌はそう言った後、そのたわわに実った胸を私の顔に押し当てながら、…いや正しくは私を抱き締めながら、


「私は苗ちゃんのこと大好きだよ、苗ちゃんに告白されたらうんって言うもん」


と言ったのだった。

その発言1つで可愛さ指数が爆発していた。


あーーー、かわいい。

ひとしきり可愛さと、それから未だ顔に押し当てられる胸の柔らかさを噛み締めて。

それから口を開き言葉を紡ぐ。


「そう?じゃあ、萌…私と付き合ってよ」


「うん!」


冗談のつもりだったけれど、即答で…いや食い気味に答えが返って来てしまった…。


いやいや冗談だから、と言いかけたがしかし、その時の萌の顔といったら、これ以上幸せを表している表情はないんじゃないかというくらい口許は緩み、目元は少しだけ潤んでいて、本当に幸せそうな表情だった。


女の子同士ってのはやっぱマズイかな?と思わなくもないけれど、幸せそうな笑顔の前では何も言うことができなかった。


ああ、本当に可愛い私の親友。

あなたは密かに私のことが好きだったのね。


見落としていた恋のピース。

少しいびつなカタチのピースは、そのいびつさにしてはすっぽり綺麗に、私の胸のパズルにはまったのだった。


救いの手を差し伸べてくれたのは、可愛い可愛い…私の、彼女。


欠けていた月はまた満月へと戻り、私の心をゆっくりと満たす。


ちょっといびつかもしれないけれど、順風満帆で、幸せな生活が続いて行く。


私の頭の中では、教会の鐘の音が鳴り響いていた__________


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いびつなピース 吉田 志乃 @kobito-penguin

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