第13話 珈琲と紅茶
一瞬、時間が止まったかのように、先ほどまで騒がしかった店内に静けさが戻り
そして、合図も出していないのに、全員が扉に目を向けました。
そこには、小太りで髭と髪の毛の比率が、明らかに違う男性が、汗を垂らしながら
立っていました。
驚いた表情を見せながらも、テーブルを縫うようにカウンターまでたどり着き
背負っていた、上半身がスッポリ隠れるほど大きなリュックを床に降ろしました。
そのひと時を、全員が見終えると、席から立っていた者は元の場所に戻り
いがみ合っていた二人は、少し不満げな顔をしながらも他の者、同様席に着きました。
私はこの異様な空間に、戸惑いながらも紅茶に口をつけ、小太りの男性を
見ていました。
店主は一切動揺することなく、小太りの男性にオーダーを取りに行きました。
『珈琲か紅茶どちらにされますか』
店内を物珍しそうに、眺めていた男性はふと我に返り
『珈琲はちょっと苦手なので、アールグレイありますか』
『もちろん』
『じゃあ、ミルクも下さい、あと砂糖は少し多めに頂きたいです』
『畏まりました』
私の注文と一緒だ、人気なのかな・・っと思いつつ、男性の注文を聞いていると
先ほどまで言い争いをしていた厳つい風貌の男が、横で大量の汗を掻きながら
私と男性を交互に見ていました。
少し気まずい私は後ろの窓に、目を向けようとすると、お客さん全員が厳つい男に
視線を送っているのがわかりました。
ただの視線なら良かったのですが、少し怒りと殺意が入り混じった様な
視線だったので、私は飲みかけの紅茶に視線を戻しました。
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