第12話 アーリー・モーニング

日が昇り、大通りには商人が露天を広げ

活気が出てきました。


【アーリー・モーニング】については、街で聞き込みをして

大体の場所を把握していたものの

大通りから路地裏に入ると、そこは迷路のように複雑になっていて

同じ所を何度も回りながらも無事、喫茶店を見つける事ができました。


喫茶店は他の建物に比べて、少し大きく窓から中を見ると

結構、人が入っていました。

アーデルを店の前に待機させて、深呼吸をして

扉を開けました。

カラン、カランっとベルが店内に響き、何人かは此方を見たものの

他の人は優雅に珈琲をたしなんでいました。


『いらっしゃいませ お好きな席にお座りください』


店主と思わしき人に、声をかけられ私はカウンターに座る事に

棚には、色んな珈琲豆や茶葉が並べられていて

今まで、喫茶店に来たことが無かった私は、キョロキョロと

店内を見渡していました。


『喫茶店は初めてかい』

『はい、珈琲はちょっと苦手なので、アールグレイありますか』

『もちろん』

『じゃあ、ミルクも下さい あと砂糖は少し多めに頂きたいです』

『畏まりました』


注文も終えて、ホッとしていると一人の男がテーブル席から此方に近づいて

横のカウンターに座りました。

男の筋肉は厚く、厳つい風貌だったので、私は席を若干横にずらし

男と距離を取りましたが、男は此方を見ながら


『まさか、お嬢ちゃんみたいな、若い娘が取引相手だとわな 物はしっかり用意したぜ』


いったいこの人は何を言っているんだ 色んな考えが浮かんできましたが

下手に答えると、不味い雰囲気になってしまったので、探りながら合わせる事に

もしかしたら、何処かで暗号を口にしていたのかも知れない、そう思った私は


『あぁ、暗号・・』

私は、わかった様な顔をしながら呟いた。

すると男は、厳つい表情をニッコリさせ

『いい暗号だろ! 俺が考えたんだよ 珈琲なんて苦いもん飲めるかよ

やっぱ紅茶にはミルクと砂糖多めが一番だよなぁ 

俺の大好物を暗号にしたんだ!』


嬉しそうに語る男に

『紅茶の何処がいいんだよ あんな物、女の飲みもんだ やっぱ珈琲が一番だ』

細身で白い帽子を被った男が、テーブル席から罵声飛ばした。


さっきまでご機嫌だった隣の男は、水の入ったグラスを握りつぶし

勢いよく立ち上がり後ろを振り向き


『もういっぺん言ってみろ!! クソやろう! 紅茶を馬鹿にする奴は俺が許さん!!』

『あぁ、何度でも言ってやるよ!! 紅茶なんて不味いもん飲めっかよ!!』


テーブル席の男も立ち上がり、言葉を返した。


いまいち、状況が理解できない私は、ただ時間が過ぎるのを待った。

周りの人たちも止めに入っているが、頭に血が上った二人を止めることが出来ず

隣の男は腰から短剣を白い帽子の男は、剣では無い何かを此方に向けて止まっている。


一触即発、この状況を打破したのはカラン、カランと響く扉のベルであった。


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