第11話 旅立ちの日

『この剣は、ワシの最高傑作、使っていたのも最強の男だったんだがな・・』


切ない目で、握り締める剣を見詰るハイルフに、私も今までの会話を整理しながら


『父が何故、敵側に立ってしまったのかは、全く判らないのね

せめてエルバさんが居たらなぁ』

徐々に近づいてくるハイルフ、そして握り締めていた剣を私の目の前に差し出しました。


『これは、アイナが使いなさい、ワシはガイナもアイナも信じておる

もう見えているはずだ、アイナにも精霊が』

私は何も言わず、差し出された剣を受け取りました。


鞘から剣を抜くと、刃の美しさに引き込まれ

つい見とれてしまいました。


剣に見とれている私にハイルフは

『アーニスはガイナのヒューデルはエルバの愛馬だったんだが

アイナとトロスが出会ったのも偶然なのか必然なのか・・驚かされたよ』


そう言って強張っていた表情も和らぎ

全てを話し終えたハイルフは、扉の前まで行き

『任務・・ちゃんと帰って来るんだぞ』

そういって部屋を後にしました。


部屋は、静寂が戻り私は、先ほど聞いた話を思い出しながらベットに横になりました。

考えれば考えるほどわからなくなり、父の最期を思い出すと自然と涙が

出てきてしまいました。


父の剣を手に取り、1つ聞き忘れていた事を思い出しました。


職人が傑作を作った場合、その物に対して名前をつける風習があったのですが

すっかり、聞きそびれ

明日聞いてみよう、そう思いながら私は夢の中に落ちていきました。


夢の中では、父と楽しく過ごしていた幼少の思い出が鮮明に映り

父を戦場に見送る所で目が覚めました。


外はまだ暗く、当分出来なくなる家畜の世話と

神殿に行ってきました。

いつものように手を合わせ、帰ろうとした時に

『エスピリトは俺がみてやるぞ』


後ろから、声が聞こえた気がしましたが、振り向いても誰も居ず私は

『よろしくお願いします』

っと大声で叫び鍛冶屋に戻りました。


身支度を済ませ、ハイルフとトロスの許可を貰っていたので

アーデスに鞍を着けて小屋を出ようとした時でした。


ハイルフが小屋の前に居て

『昨日の剣だが、あの剣には名前があってな 名前は・・』


全てを言い切る前に私から

『エスピリトだよね?』

少し驚いた表情を見せましたが、微笑みながら

『あぁ、知ってて当然か 気をつけてな』


鍛冶屋を背に、私は朝焼けの街に姿を消しました。


アイナ・クリス【18歳】

此処から私の冒険が始まりました。




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