第10話 達人と名手

任務開始、前夜


皆で飲み明かした宴や日課だった家畜の世話

そして神殿にも行って来ましたが、ベルには会えずでした。


初任務と言う事もあり、緊張して寝付けないでいると

トン、トンっと扉をノックする音が聞こえました。

『起きてるかい もし起きてたら話がある』


ハイルフの声でしたが、いつもより声が低くかったのが、印象的で

私はベットから起き、扉を開けました。


部屋に招き入れると椅子に腰掛け、何か悩んでいる表情が

判りました。


『こんな遅くにどうしたんですか』

私の質問に対して、ハイルフが深呼吸して答えました。

『父親の事どこまで知っている』

思ってもみない、ハイルフの質問でしたが、父が戦死した事しか

私の記憶には無く、それ以外はとても優しい父親だったと言う事ぐらいでした。


『やはり、聞かされてはおらぬか アイナ、お前は父親【ガイナ・クリス】の最後を聞きたいか

少し残酷な話になるが・・』


私はゆっくり首を縦に振り、言葉は発しませんでした。

そして、ハイルフは続けました。

『この話はワシが見たわけではないが、トロスの父親【エルバ・カイル】から聞いた話だ』


窓から射す月の光が部屋を明るくし、ロウソクが無くても十分互いの顔が

判るぐらいでしたが

ハイルフの表情は強張って見えました。


『ガイナは当時、王国内で剣術においては右に出るものが居ないと、言われていた豪腕でな

エルバも弓の名手として活躍していたが、軍の召集がかかって、その配属先がガイナが率い部隊だった』

『弓の名手と剣の達人、二人は直ぐに意気投合したそうじゃ』


『戦争でも二人の活躍は、皆の希望になるぐらい、すごい物だったらしい』

『最終作戦で城内に入り別行動した二人だったが、次にガイナとエルバが顔を会わせた時は

ガイナは見方の軍隊に剣を向けていたらしい』


今まで聞いたことが無い話だっただけに、手に力が入りシーツをギュっと握っていました。


『エルバの声にも反応せず、見方だった者同士の殺し合いが始まった

エルバも親友だったガイナを信じ、何も言わず共に戦ったそうじゃが

最後は魔道師達の豪華で焼かれ、取り囲まれて死んだらしい』


ハイルフが椅子から立ち上がり、床を触りだし

その体勢で話を続けました。


『ガイナは自分の身体が燃えながらも、エルバに自身の剣を渡し

「後は頼む」そう言って盾になり、エルバを逃がしたそうじゃ』


『エルバも最期を共にしたかったそうじゃが、親友の最後の頼みを

断る事が出来なかったらしい』


話しながら床の板を一枚外し、中から布で巻いた何かが出てきました。


『無事街に戻ったエルバは、この話をワシに渡した後、姿を消したよ

この剣をおいてな』


巻かれていた布を取ると、そこには美しい装飾をされた剣が出てきました。



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