第7話 剣精の加護

『小人さん、強くなりたい 馬鹿にされない強さが欲しい』

私の発言に剣を抜く精霊、先ほどまで小人に見えていた身体は

剣を構えると同時に青年の身体に変わっていきました。


『小人さんは恥ずかしいぞ、呼ぶなら【ベル】と呼んでくれ』

『では、1つ手合わせを願おうか』


今までに感じたことが無い威圧に圧倒されながらも、剣を抜き

深呼吸して、打ち込むタイミング伺いました。


先に仕掛けてきたのはベルからでした。

姿勢を低くした状態から、高速とも言える突きが顔の数ミリ横を掠め

避ける事に必死だった私は、ベルの早すぎる次の攻撃に対して

体制を崩しながら、剣で守る事が精一杯でした。


反撃の糸口を見つける事もできず、ベルの激しい剣技を受け止める

防戦一方の状況が続きました。


いつもの私なら、一つ一つ防ぐ事に頭がいっぱいで次第に追い詰められ

負けるパターンが多かったのですが、気づけば月の光に反射する

ベルの剣の刃が綺麗だな、なんて呑気な事を考えていました。


月の光の反射とは別に、ベルの身体から白い光が見えました。

見間違いかと思いましたが光の大きさが大小、変化していたので昔、見た本を

思い出しました。


本には、これと全く同じ現象が書かれていて

【剣精の加護】と言われているこの現象は

敵対する相手の身体から光が見え、剣を打ち込む隙が判ると言う物でした。

この現象を経験した者は、皆精霊が見えると言っていたそうです。


ですが、これが剣精の加護の影響か、わからない状態でしたが

この状況を打破するには、一か八か賭けてみるしかありませんでした。


脇腹辺りで光が最も強い輝きを放った瞬間、ベルの剣を受け流し

捨て身の覚悟で大きく一歩踏み込み、ベルの脇腹を捉えました。


剣先が当たったと同時に、ベルの身体の回りに竜巻が起こり

『これはいつも着てくれたお礼だぞ その力役立ててくれ』

竜巻の間から、微笑みながらこちらに手を振り

竜巻が収まると同時に、ベルの姿も消えていました。


消えると同時に、扉も元に戻り不思議な時間は終わりました。




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