第7話 真の力心の力 3月29日午後

ケチャップの収納に成功し、取り出せなくなった。

コショウは収納も召喚も完璧に成功し、『白紙の要塞』の使用方法をマスターしたあと、今度は能力について説明を受ける。


「能力って言うのは私にもよくわからないのだけれどね、とりあえずの発動条件としては、

・能力者の生存

・能力の大雑把な内容の把握

・基礎体力

・魔法陣又は能力者の血液3mlほど

・強い願望

このくらいかしら、これらを満たしている場合にのみ、能力は発動し、能力者に従うの」


そうなんだ。

神無木はそれしか言いようがなかった。それもそのはず、現実に能力があるなんて生きてる中で思うことはまずないのだから。


「じゃあ、やってみようか」


エマは気合たっぷりにスタートの合図をするが、でもあなたの能力って何なの?とテンションを下げつつ聞いてきた。


「『想像したものを創造』するとかそんな感じだったと思う、ほんとに何でも創れたらチートだよね」


と、笑いを混ぜながら説明する神無木に対し、エマは衝撃的な告白をされたかのように1歩後方へ退いていた。


「え...ほんとに何でも創れる...?」


エマは化け物を見るかのような目で神無木を見つめる。神無木の部屋一帯には誰も近づくことを許さないような緊張が走る。


「あんた、なに...創るつもりなの?」


「明確なものはないさ...でも...」


当然創りたいものがあるからこの能力を得た。だがそれは、それを創ってしまえば自分はもうこの部屋に戻ることが心理的に出来なくなってしまうかもしれないもの。


『異世界』


神無木は昔から異世界に1度でいいからいってみたいと考えていた。ただ同時に、そんな事は出来ないことも把握していた。

しかし、今はこの能力の発動条件も知ってしまった。

小さい頃からの夢は叶えるチャンスがあるとすれば絶対に叶えたい。


そんな意味が『でも』には含まれていた。


「でも?」


エマは真剣な眼差しで問いただす。


「...別の世界...」


エマは...

エマにはきっとそれをした時どうなるのか、何が起こるのか、はたまたそんなことは出来ないのか、それらをすべて知った上で次のように話した。


「それは一体なんのために?どんな世界を創りたいの?そこで何をしたいの?もし、あなたが此処に帰ってきたくなくなってしまったとしたら?あなたの家族や元の生活はどうするつもりなの?私にはあなたの買主という名目があるからあなたの身の回りの生活を考えて、世界の創造をできないようにすることも可能なのだけれど、そうしてしまえばその能力はすべてなかったことになってしまうの、それもわかって欲しいし、第1に私はあなたを戦争用に買い取ったのに別の世界から帰ってこなくなるなんていう大赤字はごめんなの」


エマは異常に真剣だった。

エマは神無木が『別の世界』と言うのに被せるようにその言葉を投げかけた。

エマは鋭い目つきで曖昧な答えは受け付けないと言った感じだった。

しかし、神無木はそんな事を気にしつつも適度に状況把握が完了していた。




・俺は生き返った。

・そこは元の世界だった。

・記憶の主を知った。

・カードと能力を手に入れた。

・エマという買主に出会った。

・エマは生き返る人間について詳しかった。

・カードは四次元ポケットのようなもの。

・能力には発動条件が存在した。

・俺の能力は多分最高の最悪で厄災をもたらすもの。

・エマはきっとこの世界の人間では無い。

これらは全て俺の周りに起きた出来事であるため嘘、偽りは多少ありとも当たっているはずだ。

では、

話の続きに戻るとしよう。



「それは創ってから考える」


エマの質問を蹴散らすかのようなひと言を放つ。


(エマには悪いがこれは俺的な自己中心的な個人的な価値観なんだ。

人には誰にだって欲しいものはある。当然両親にも、妹にも、それは記憶の中の彼女にだって当てはまる。

そしてエマにだって欲しいものはあると思う。俺を買い取ったように。

それが俺はたまたま『別の世界』、異世界だった。

それだけのこと。

だから、俺は欲しいものを目前にあきらめることなんてできないんだよ。)


「そう」


と、エマは言った。どんな事を考えてそういったのかは想像もつかない。

怒りかもしれないし呆れかもしれない。


ケチャップを取り出せなくなってから数時間。

神無木は世界の生成を開始する。


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