第5話 戻って...来た? 3月29日
「にーさん」
「にーさんってば!」
なにやら聞き覚えのある声が聞こえる。
「早く起きてよ!」
(起きる?)
「おそーい!」
ものすごい勢いで声の主は飛び上がる。
その狙いは神無木の腹を指していた。
「ぐはぁ!」
「てめーふざけんじゃねぇぞ!内臓飛び出るじゃねぇか!」
「はあ?出るわけないじゃん」
「早く起きないからそうなるのー」
と言い残して1階に降りていった
毎度毎度生意気な妹だ...
ーー妹?
ふと気づくとそこには何も変わらない妹の存在がたしかにあった。
どうして妹が?
俺は転送されたはずじゃ...
※ ※ ※ ※ ※ ※
ーー転送は成功いたしました。
「神無木様は本日3月29日より」
「エマ様の所有物となりました」
つまりはこういうこと。
俺がエマ様とやらの持ち物になり、今日からはエマ様の専用××とか○○になるというわけだ。
エマというからには女なんだろうが...人間だよな。
※ ※ ※ ※ ※ ※
そうか、人間なんだなそう理解していいんだな。
神無木はまだ気づいてはいなかった、
こんなことが出来る時点で相手は人間ではないのに。
「おはようございまーす!」
突如として後に何者かが現れる。
「あぁおはよう...」
おはよう?
「全く...せっかく買い取ったのに残念な人ね」
「買い取った?」
「お前エマなのか?」
「くっくっく、早速呼び捨てとは度胸があるねぇ」
エマは中二全開な笑い方をする。
笑い転げながら。
2個か3個質問を無視しながら。
「で、何で俺を買い取った?」
「緊急事態だったから?」
「緊急事態?」
「戦争でもしてんのか」
まぁそんなところだねと楽しそうに言った。
楽しそうに。
「戦争なんだろ?なんで楽しそうなんだよ」
「それは戦争だからさ」
くっくっく...とまた中二全開な笑い方をする。
ーーこの世界の戦争とはね、死なないし生きられないの。
記憶も残らなければ、身体、精神も残りはしない。
『そんなことがあった』それだけなの。ーー
彼女の記憶を思い出した訳では無いが自然と思い出した。
「...それは」
「どうかしたの?」
相変わらず馬鹿みたいにニコニコしている。
「当然俺はそれに参加するんだよな?」
「しないよー」
またまた話がおかしくなっていく。
しかしエマは神無木に対し、真面目に聞いて欲しいと今までの会話がなかったかのように重い沈黙を要求する。
「この戦争にこの世界は関わっていない、まずそれを知っておいて欲しい。そして次にこの戦争に終わりはない。始まりがあるだけで終わらないんだよ。君は暗い部屋から転送されてここに来ただろう?その時ロリのポニーテールに合わなかったかい?彼女は戦争運営の1人なんだ。でも彼女はこの戦争を知らない。ただあそこ、あの暗く無駄に広い部屋で永遠に死者の転送又は取引を請け負う。当然、彼女の仕事にも終わりはない。彼女はあの仕事を始めて12年くらいじゃないかな。そして最後、君らこの戦争でのブレイカー。運営殺しをしてもらう」
彼女は1度も目を話すことなく表情も崩すことなく話し終えた。
あの笑顔は一切出てこなかった。
それほど重大なことなのだろう。
「それで、俺は運営を殺せばいいのか?でもこの戦争では誰も死なないんじゃないのか?」
「わたし今そこまではなしちゃってた?」
まぁいっかと自分で疑問を解決したようだった。
ーバンッ!
ドアが悲鳴を上げて妹から逃げるように開く。
「まだ降りてこないの!?」
「肋骨おるぞ!」
ドアは胸ぐらをつかんで1本取られているかのような扱いを受ける
...かわいそうに
ーバンッ!
また悲鳴が上がる。
エマはいつの間にかその場にはいなかった。
また来るねと、窓に息を吹きかけたようなところに書いてあった。
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