第4話 見知らぬ部屋 3月28日推測
ピッピッピーー...。
心拍数を測っているのであろう音のなる機械は突如として重い静寂を要求する。
少年の腹部に適度な重みと35度くらいの酵素がよく反応しそうな感覚を覚えた。
しかし、少年は決して起き上がり確認することは出来ない。
少年は暗い部屋の中にいた。
誰も入ることの出来ない、誰も出ることの出来ない
照明が一つだけついた100畳ほどありそうな無機質な部屋に。
当然それは少年のみが知っていること。
それは少年のみが知るべきことを知るために。
ーーようこそ、神無木様。
美しい天使のような翼を備えたロリータポニーテールはそう言った。
この場にロリータポニーテールと少年以外に誰かがいたとしたら聞き間違いという流れもありえるが、
残念ながらこの場には少年とロリータポニーテールの2人だけだった。
ーーここはMG支部です。
ーー外界から隔離されたステルス性浮遊空間です。
片言の棒読みで話し続けるロリータポニーテール。
何処か機械式なんじゃないかと疑い始める。
ーー今から私達はあなたが同意した上であなたを
『売却』
ーー致します。
ーーよろしいですか。
『はい』『と』『いいえ』
なぜ選択肢に
『と』
が入っているのか知らないが説明を聞かないことには何も判断できるはずがない。
そして神無木は質問する。
「はいを選んだ場合、俺はどうなる?」
回答までに少しのラグを感じた。
「はい、神無木様がはいを選んだ場合、生き返ります、そして同時にこの部屋いっぱいにアイテムが出現します」
「その中から2つ持って生き返ることを許されます。アイテムは大きくわけて五種類」
「カード、液体、固体、気体、そして能力です」
「え?」
ーーよろしいですか。
『はい』『と』『いいえ』
神無木はよくわからないが生き返れるのならとはいを選ぶ。
すると、ロリータポニーテールの全身が光り始める。
無数の光となり、大量のアイテムに変化する。
アイテムは...
いろいろなポーション。
雷、光、毒、回復などほんとに沢山。
これらは液体に入るものだろう。
カードケースに入る不気味に輝くカード。
龍の書かれたもの、紋章の書かれたもの、何も書かれていないもの、アビリティと書かれたもの。
その他沢山。
これらはカード類だろう。
ビームサーベル、コンクリート?の破片、ド○クエで出てきそうな星のかけら、カレールー?、禍々しい南京錠、おしゃれな帽子。など役に立つのかわからない固体類。
サンソと書かれたスプレー缶、いや、ドラム缶。
チッソと書かれたドラム缶。
オナラ...と書かれたスプレー缶。
おそらく気体だろう。
あとは能力なのだが、
それはどこにも見当たらない。
「能力もあるんだよな?」
という質問に対し
無表情でロリータポニーテールは返答する。
「はい、書類にサインを」
そう言って説明は終わった。
数秒後、脳内に書類が映し出される。
ーー欲しい能力は何ですか。
だけが書いてある。
「欲しい能力のイメージを強く意識することで手に入ります」
ロリータポニーテールが説明をはさむ。
「そうか...」
神無木は地球上の時間で3時間ほど物色し、すべてのアイテムを見終わる。
その間ロリータポニーテールは話しかけないと話さなかった。
神無木はもっていく2つをきめた。
1つは何も書かれていないカード。
効果も何もわからないが、他のものをカードに閉じ込めることが出来るのではないかと思い、これにした。
1つは能力。
神無木のイメージした能力は
『想像したものを創造し、自分の好きなようにできる』
というもの。
ーーそれでよろしいのですね
「あぁ、構わないさ」
ーーでは改めてこれから神無木様を売却する相手を紹介します。
「神無木様を売却する相手方は、フルカスと呼ばれる町の町長、エマ様です」
「フルカス?」
(外国にそんな名前あったっけ?)
ーー問題はありませんか
ーー同意する場合には
『はい』
ーーを。
ーー30秒のうちに反応がない場合には、この部屋は消滅します。当然神無木様も消滅します。
「わかったよ!はい!同意します!」
ーー同意を確認しました。
ーーでは売却場所に転送いたします。
少年の人生の幕はカーテンコールをする暇もなく閉じたのであった。
今後の生活なんてあるはずがない。
もうエネルギーが作られることも細胞分裂が行われることもなくきっと親族によって火葬されるのだろう。
少年はまだ自分以外の葬式になど行ったこともないのに、1発目で主役を勝ち取った...
少年は死んだ。
3月27日午後6時35分、死亡が確認された。
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